ADHDの脳は発達の開始が3年ほど遅れているので、その分成長の遅れが出ることがあります。
しかし、適切な処置をすることで脳の機能は改善します。
下のグラフをご覧ください。(クリックすると拡大できます)
Brain development in ADHD. Lisa AFriedmanより
青い線が定型発達です。
オレンジの線がADHDです。
緑が元ADHDです。
これらの線はそれぞれ、脳の厚みの減少を比較しています。
グラフをみてみますと、オレンジ色(ADHD群)の皮質の厚さは青色(定型発達)のに比べて全体的に薄いことがわかります。
ですが、緑色の線(ADHDから脱した人たち)も併せて比較すると、初めはADHDとスタート地点は同じだったのがいつのまにか定型発達群に追いついています。
これはつまり、加齢するに従って定型発達のグループへと横滑りしたということです。
一体何をしてこのような変化があったのでしょう。
投薬療法か療育か
このデータは主に投薬による変化を追跡調査したものです。
つまり、投薬により皮質の減少をADHDから定型発達群へとスライドさせたことに成功したのです。
投薬のメリットは、ADHDの人が落ち着きを取り戻して作業などに集中できることです。
一方、デメリットとしては以下のことが考えられます。
・薬の相性によっては、量を加減する、ジェネリックに切り替える、いろんな種類のものを試す、といった試行錯誤の果てに副作用の方が強く出てしまうという可能性が残る
・ドーパミンの出やすさなどは変化するものの、ワーキングメモリそのものをどれだけ高めるのかは不明
・なるべく投薬せずに治療をしたい人には不向き
ソウマハウスは投薬によって生じる可能性のあるデメリットをクリアする
というのも、ソウマハウスには人とのふれあいや療育を通じて、投薬と同じかそれ以上の効果を生み出すカリキュラムが揃っているからです。
ソウマハウスの具体的な療育目的は
・ドーパミンを出やすくする
・ワーキングメモリを鍛える
・社交性を高める
・言葉を伸ばす
となります。
投薬による治療の場合、ドーパミンの出やすさは変えられるかもしれませんが、それ以外の要素をどれだけ伸ばせるかはよく分かっていません。
とくに、ADHDをはじめとする発達障がいや、それに伴う二次障害に対して処方される薬は、短期的な効果こそ証明されてはいるのですが、長期的な投薬の結果どうなるのかまではなかなか目が向けられておらず、データが不足しているのが現状です。
過度な投薬や長期にわたる投薬には、ゆっくりと時間をかけて脳内物質が分泌されるバランスを崩し、薬なくしては生活できないといった将来的なトラブルが起こるリスクも考慮する必要があります。
また、たとえ薬によって症状が改善したとしても、その良い状態を保てるようになるには、薬だけでなく環境を整えることも大切です。
特に、薬による治療を受けるのが子どもである場合、薬の役割はあくまでも自転車の補助輪のようなサポートと捉えるべきです。つまり、あまり薬だけに頼りすぎるのも良くないのです。いずれ自転車をひとりで漕げるようになるためのトレーニングも大切です。
そのトレーニングの役割を果たすのが療育なのです。
投薬でも多少ポジティブな変化はあることは期待できるかと思いますが、薬を利用せずとも同じかそれ以上の効果を引き出して脳を変えられるので、あえて薬に頼る必要はないかもしれません。
もちろん、投薬と療育の両方を活用する手もありますが、それでも、どのような環境を用意できるかはとても重要なことなのです。