薬物治療を行うことに対して踏ん切りがつかない両親に共通する悩みが
「もし薬に依存して、最終的には薬物依存症になったらどうしよう?」です。
2018年1月の時点で使用が認められているADHD向けの薬を説明すると共に、食事療法などの非薬物療法が良いのか、それとも並行して薬も使ったほうがいいのかみてみましょう。
抗ADHD薬には少なくとも三種類ある
現在日本で使われているADHDのための薬は「コンサータ」「ストラテラ」「インチュニブ」です。
コンサータは、覚せい剤などと似た方法で脳の機能を一時的に高めます。ドーパミンというホルモンを増やして脳に興奮と快感を与えます。覚せい剤と似ているということは、使い方を誤れば依存性や耐性が現れるということです。
つまり、薬にハマる、効かなくなるからもっと使いたくなる、ということです。
コンサータのそういった弱点を解消したのが「ストラテラ」と「インチュニブ」です。
ストラテラとは、ノルアドレナリンと呼ばれるホルモンを使って脳の注意力を高めてくれます。この場合、依存性や耐性が身につくことはないのでコンサータのような心配はありません。
インチュニブとは、脳の信号の伝達を正常化させる働きがあり、結果的にADHDの症状が軽くなります。ストラテラと同様、依存性や耐性が付くことはないのでコンサータのような心配はありません。
このように、徐々に悪いイメージを払拭するような新薬が増えてきているので、ADHD児への投薬の抵抗が減ることが期待できると考えられます。
2011年ではまだ長期的な効果が分かっていなかったが、逆転勝ちする
薬を使うことには不安が多いという論文は2011年ごろにはありました(1)。
しかし、それから4年後の2015年の論文では、長期的な薬物療法は安全であると考えられ、可能なら薬物とそれ以外の治療方法などを併せて続けることが、最もADHDの改善につながると結論づけられています(2)。
つまり、たった4年で「薬物療法」が逆転勝ちを果たとも考えられます。
ADHDを治療していないとどうなる?
また、2012年の論文では、治療したADHDと未治療のADHDとでは以下の点で差が開いたことが分かっています。
(1) 薬物やアルコール、ギャンブルなどの依存
(2) 学歴
(3) 犯罪や素行障害
(4) 交友関係、社交性や離婚歴など
(5) 職歴や収入
(6) 自己評価の低さ、自殺願望など
(7) 運転中の事故や問題など
(8) 裁判、救急、借金などに頼る割合
(9) 肥満
これらの社会生活上の問題行動に関して、ADHDを未治療のままでいる人と治療している(していた)人との間では、未治療の人々の方が抱えるリスクが高いことが分かっています(3)。
より詳しくはこちらの記事をご覧ください。
まとめ
・薬物治療とそれ以外の治療方法(ワーキングメモリトレーニングや食事療法など)と並行することが一番改善に早道。
・改善させないまま放っておくと、肥満、犯罪、借金、ギャンブル依存や離婚などの不幸せなリスクが高まる。
・依存性のない薬もすでに開発されており、効果があることも分かっている。
参考文献
(1)Long-term outcomes with medications for attention-deficit hyperactivity disorder: current status of knowledge. Huang YS
(2)Effect of treatment modality on long-term outcomes in attention-deficit/hyperactivity disorder: a systematic review.
Arnold LE
(3)A systematic review and analysis of long-term outcomes in attention deficit hyperactivity disorder: effects of treatment and non-treatment.
Shaw M