ADHDの一般的なイメージとしては、落ち着きがない、学力が低い、ぼーっとしている、集中力が持続しないなど、ネガティブなイメージが先行しています。一方で、ADHDに関する書籍にはこんなことも書いてあります。
「成功者にはADHDが多い」「あの有名人もADHDだった」など、ADHDであれば大成功を目指せるかのような印象を与えることさえあります。
実際のところはどうなのでしょうか?
ADHDは型を守るのが苦手
現在の法律、社会的なルール、スケジュールの管理方法などは大多数を占める「定型発達」の方々によって作られたものがほとんどです。こういった環境の中で、ADHDの方はいろんな苦労を覚えます。
ケアレスミスが多い、日程の管理が難しい、興味が次々と移る、飽きると全くやる気になれない、先延ばしや延滞料金を払うことが多いなど、「定型発達」の人たちからすれば、あまり良く見えないことばかりに思われるかもしれません。
しかし、これは進化的にみても、脳機能的にみても、ADHDの本来の脳の使われ方がされていないために起こっていることなのです。
ADHDは興味があることに対しては凄まじい速度で学習をし、スキルを獲得します。他には、新しいことや珍しいもの、刺激的な楽しい環境を常に求めるので、基本的には「定型発達」の方々よりも時代を先どることがほとんどです。もちろん、失敗することもあります。しかし、一旦時代の波に乗るようなものと出会えば先行者利益にあやかり、あとを追うように「定型発達」の方々が付いてきます。
つまり、ADHDの方々は本来、型を守るのではなく、型破りな生き方をする方がパフォーマンスが非常に高いということです。これは、収入面や人生の質の面でも同様です。ADHDは、過集中を生かして型破りなことをし、最大限のパフォーマンスを発揮するための種類の人間であるといえます。
しかし、義務教育や一般常識的な社会にはそういった環境は基本的には用意されていません。ADHD本来のwant to(〜したい)の追求を許されることなく、社会にはhave to(〜しなければならない)が多いと感じるADHDの方にとっては生活上のストレスが強く、最終的にはうつ病や人格障害といった二次障害へと横滑りします。
ADHDは定型発達のルールに合わせてやる必要なんてない
ADHDの脳のもっとも効率の良い働かせ方は、とにかく本人が見つけた好きなことや目標を最大限に応援することです。
・恐竜が好きなら恐竜の本を買ってあげる、博物館などでワクワク感を高めておく。
・音楽が好きなら楽器を習わせる(もっとも望ましいのがピアノ)。
・絵を描くのが好きなら、絵の書き方に関する書籍などを買う、和風、洋風、アメコミ風、萌えキャラ漫画風などあらゆるジャンルの漫画の書き方本を買い揃えてみる。
・心理学が好きなら本屋さんで心理学コーナーに連れて行き、欲しい本を毎月1冊〜5冊買う。
過集中を活かして一気に学習するので、好きなことであれば知識やスキルが勝手に増えていきます。あとは、親が「君ならきっとその大きなゴールを達成できるよ」と応援することです。
・世界一の恐竜博士になるならそれを応援してください。
・世界一の音楽プロデューサーになるならそれを応援してください。
・世界中の人に夢と希望を与える漫画家になりたいなら、それを応援してください。
・心理学の博士となって女性の心を射留める方法を見つけてモテたいという夢なら、それを応援してください。
・「ヒカキン」に憧れて、大人からしたらしょうもない、まだまだ下手なビートボックスの恥ずかしい動画を子供がyoutubeに上げていても、「素敵な目標だね、君らしくていいよ」と全力で応援してください。
youtubeのコメント欄に「こいつ下手くそ」「顔の動きがきもい」「部屋が汚い」「消えろゴミ」「調子に乗るな目立ちたがり」などと書かれていても、そんなものは関係ありません。なんの実績も成果も出していない、行動すらしていない人からの僻みや批判コメントはソファーの下のホコリや爪垢ほどの価値もありません。自信を持って親は全力で子供の味方となって応援してください。
途中でゴールが変わったっていい
ADHDの場合、大ゴールは同じままであっても、小ゴールや中ゴールが変わることはあります。興味があちこちに向いたり、急に興味を失うからです。それはそれで構いません。決して「目標を変えるなんてけしからん!一度決めたことはやり通せ!」と言わないでください。それだとただのhave toの強制になります。人を傷つけている訳ではないので、本人が目標を変えるくらいなんの問題もありません。
・せっかく買った心理学の本も半分しか読まれずに途中で脳科学にはまってしまった。
・せっかく揃えたウルトラマンの図鑑も無駄に場所を取るだけで今では恐竜博士を目指している。
・せっかく漫画家になる応援をして色々親が用意したのに、今は音楽作りにはまっている。
そんなものです。
親から見たら分からないだけで、子供からしたら実は一貫性があるのかもしれません。だから、子供のゴールが途中で大きく変わってしまっても親は「そうか、君ならきっと達成できるよ!」と笑顔で応援してください。
まとめ
・ぶっ飛んだゴールであっても、心から応援してあげよう
・ゴールは変化しても良い。むしろ変化するもの。
・人を傷つけることであればそれはよくない、しかしそうでないなら徹底的に好奇心を満たしてあげよう。
・ゴール追求を批判してくるドリームキラーは必ず現れるが、全て無視して突き進むこと。