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ADD児の脳によい睡眠と食(後編)

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 たとえば、「朝はコーヒーを飲んで頭をスッキリさせる」とか、「夜は晩酌が欠かせない」といった生活習慣を持つ方もいらっしゃると思います。

 確かに、コーヒーを飲むと眠気が醒めるような感覚はありますね。これは、コーヒーに含まれるカフェインという成分の作用によります。ところが、表面的には「目がさめる」「シャキッとする」といった感じがしても、カフェインを摂ると脳全体の血流が低下する事が分かっています。同様に、タバコに含まれるニコチンも、脳の血流を悪くします。

 

 どうしてADHD児の話をするのに、コーヒーやタバコの話をするのか。それは、大人の持つ生活習慣は、いずれ子どもにも影響するようになるからです。喫煙する親のもとで育った子どもが、将来自分でもタバコを吸うようになる確率は、非喫煙者の親のもとで育った子どもよりも高くなります。コーヒーやお酒についても、タバコと同じ事が言えます。

 

 そして、ADHDの若者・成人の50以上パーセントは、お酒や薬物を使い過ぎる、あるいは、過去にそうだったという問題を抱えています。

 

 たとえ定型発達であっても、嗜好品に依存し過ぎる事は心身の健康のためになりません。それが、発達障がいを抱えているとなると、より依存しやすくなる傾向は強まります。というのも、発達障がい者には、脳機能の活動の低さを補うため、自ら積極的に脳を刺激する行動に出やすくなるからです。言うまでもなく、脳機能を低下させるそれらの嗜好品を常用すれば、ADDの症状は悪化します。定型発達の人以上に、発達障がい者は依存している物を断ち切る事に苦労しなければなりません。



 お子様を将来的に悪い生活習慣に陥らせないためにも、子どものうちから正しく健康的な生活を意識させる事が大事になります。

 前回のコラムでは、「ADHD児の脳によい睡眠と食(前編)」というタイトルで、主に健康的な睡眠の在り方と、それを習慣づけるコツを紹介しました。今回は、「食」の方に注目して見ましょう。

 

ADD向けの食事療法

 

 みなさんは、お子様にどんな食事を摂らせていますか。多くの家庭では、白いご飯やパンといった炭水化物がメインにあるのではないでしょうか。それは私たちの生活では、ごく当然のことかもしれません。ところが、炭水化物には脳の集中力を低下させてしまう力もあるのです。

 というのも、炭水化物はすぐに身体に吸収されるのですが、その時、血糖値が急激に上昇します。それに反応して、血液中の糖質を分解して体内に取り込むためのホルモンであるインスリンが分泌されます。この時、糖質を摂りすぎていると、インスリンが大量に分泌され、血糖値は一気に正常値以下にまで下がります。そうなると、人は疲れを感じます。

 つまり、炭水化物の多い食べ物を摂ると、注意力の低下が起きて、たとえ定型発達でもボンヤリしやすくなったり、混乱したり、眠気を感じるようになってしまうのです。ゆえに、特に診断を受けていない人たちでも、「注意力の低下」という、まるでADDのような症状が出てしまいます。そんな副作用のある食べ物を、ADD児が食べたらどうなるか。問題となる行動が悪化するのは目に見えています。

 

脳の活力を高めてくれる食べ物

 

 ADDの人たちに適した食事は、「高タンパク質、低炭水化物」なメニューです。具体的には、肉や野菜、卵、チーズ、全粒粉のパンなどです。逆に、ご飯、パン、パスタ、ジャガイモ、砂糖の入った飲み物などは避けるべきなのです。

 

 タンパク質は、身体の免疫や体調全般を整えるために欠かせない栄養です。さらに、「高タンパク質」の中でもお勧めな食べ物の中として、マグロ、鮭、サバ、ニシンなど、寒冷地で穫れる魚類の肉があげられます。というのも、これらの魚肉には、タンパク質だけではなく「オメガ3脂肪酸」という脂質が含まれており、これが、ADDに特有の衝動性、不注意、過敏さを鎮める効果を持っているからです。もしも、魚を毎日食べる事が難しければ、精製されたオメガ3脂肪酸のサプリメントを摂ったり、一日に大さじ一杯の亜麻仁油をとることでも補えます。

 

 ところで、「炭水化物」は控えるべきと書きましたが、果物はどうでしょうか。一見すると、果物は健康的な食品のように思えます。しかし、果物には「果糖」という炭水化物の一種である糖質が多く含まれているため(これが果物の甘さの正体なのですが)、あまり多くを食べるのはお勧めできません。

 

 果物はあまり良くないと聞いて、意外に思われた方もいるかもしれません。そもそも、「糖質」にはどんな食べ物があるのでしょうか。

 先ほど「低炭水化物」と述べましたが、炭水化物には「単純炭水化物(パンやご飯など)」、「複合炭水化物(野菜、豆類、全粒穀物など)」、「糖類(果物や砂糖など)」があります。つまり、果物も炭水化物の一種、「糖質」の部類に入るものなのです。

 糖質は、さらに大きく三つに分ける事ができます。まずは、果物に含まれる「果糖」、砂糖などの「ショ糖」、乳製品ひ含まれる「乳糖」です。その他にもブドウ糖などがあります。

 

 こうした炭水化物が、頭をボンヤリさせ、集中力を低下させ、疲れやすくしてしまう事についてはすでに説明した通りです。

 砂糖を使ったお菓子や飲み物を控える事はそれほど難しくないかもしれません。ですが、果たして毎日の食事からご飯やパン、果物を外すことなどできるでしょうか。おそらく、それを習慣づけるのはかなり大変なことと思います。

 そこで、食べる順番に気を遣うという方法があります。たとえば、ご飯、卵焼き、サラダ、スープのメニューだとしたら、サラダや卵焼きから先に食べるのです。炭水化物の後回しにすることで、血糖値の急激な上昇を和らげることができるからです。

 

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