LD(学習障がい)とは?
みなさんは「学習障がい」というものを知っていますか?
「学習障がい」は、英語圏では「LD(Learning Disabilitis)」と呼ばれ、日本国内でも「LD(学習障がい)」と表記されたりします。
これは、脳の中枢神経で起きている機能障害のために、情報の処理の仕方が定型発達の人々とは異なる状態にある人々のことを指します。LDを持っている人は、その特性のために、文字の読み書きや計算など、特定の能力の習得が普通の方法ではうまくいきません。これは、本人の努力不足といったこととは無関係です。彼らの脳の処理能力、学習、理解の仕組みが周囲とは違うために、学校の授業についていけないといった問題を抱えることになります。
もちろん、誰だって学力に違いはあるでしょう。しかし、LDの人は単純にテストの成績が悪いのではなく、「みんなと同じやり方で学ぶことができない」ために、「誰でもできる」ような簡単なことを覚えられなかったりします。そのため、彼らは生涯に渡って生活に困難を抱えるリスクがあるのです。さらに、LDは風邪や骨折のようにはっきりと「完治」させる方法がありません。彼らの特性に合った、特別な学習方法が受けられるサポートが必要になります。
LDは、子どもの頃から少しずつ特徴をあらわにし始めます。文字が書けない、文章が読めない、簡単な計算ができない、そんな姿が目立つため、しばしばLDを持つ子どもは「勉強ができない」とか「知能が低い」と勘違いされてしまいます。これは、LDに対してよくある誤解です。LDは知的な発達そのものに問題があるのではなく、あくまでも特定の能力の習得が難しい障がいなのです。
たとえば、両親のどちらかがLDであれば、子どももLDになる可能性は高まります。つまり逆に言えば、LDとは先天的なもので、本人の努力不足が問題なのではありません。ところが、LDの「周りは簡単に習得できていることが彼らには習得できない」という特徴的な姿がある一方で、知的な発達に問題がないために別の分野では活躍したり周囲と同様に振る舞えるため、一部の人間から見ると単に「怠けている」だけに見えてしまうことがあります。この誤解は、大人からの必要以上に厳しい叱責に繋がり、「勉強ができない」自分を責め、低い自己評価の形成に繋がるリスクが高くなります。
ADHDとLDの関係
何かを学び取り、それを別の場面で活用する。そういった力は、脳の実行機能(執行機能)がうまくはたらくことで出来るようになります。この脳の実行機能とは、人の思考や行動を状況に応じて最適にする力のことで、その神経は前頭前野にあると考えられています。この機能があるからこそ、人は集中して何かに注意を向け、新しく得た情報を整理し、別の場面に応用したり、整理してまとめたりすることが出来るのです。人が目標を持って行動するためには、この機能が欠かせません。ここがうまく機能していないと、人の行動は行き当たりばったりで、計画性やまとまりのないものになってしまうのです。
たとえるならば、脳の実行機能とは、オーケストラの指揮者のようなものです。脳のさまざまな部位の機能をまとめ、調整する管理者の役割をしているのです。
ADHDは、この実行機能がうまくはたらいていない状態を指します。大人か子どもかを問わず、ADHDを抱える人々が、周りから見てしばしば脈絡のない行動を取っているように見えるのは、この機能不全が原因と言えるでしょう。
たとえば、子どもの場合であれば、何か思い立ったらそのまますぐに行動に出てしまうため、先生の指示に従わず別のことに夢中になっていたり、授業中に急に席を立って教室を出て行ってしまうことがあります。また、計画を立てて物事を処理できないため、「部屋を片付けなさい」とか「宿題をやりなさい」などと説教をしても、すんなりうまくはいきません。
これが大人ともなると、事態はもっと深刻になります。というのも、子どもであれば、最終的には、親や身近な保護者が彼らの無計画や不手際を面倒みることが出来るからです。しかし、ADHDを抱える大人は、自分で計画を立てて仕事をやり遂げなければならないため、何か一つの仕事に取り掛かろうとしては別の事務処理に気が向いて…ということを繰り返し、最終的には手に負えない量の問題を背負う羽目になるのです。
逆に言えば、ADHDを抱える子どもの身の回りの世話をし過ぎることは、根本解決にはならない、とも結論づけられるでしょう。大人がその場を丸くおさめるために、片付けや宿題を肩代わりしてしまうだけでは、彼らは将来、より一層困ることになるかもしれないのです。助けるのも大切ですが、彼らの症状をどのように改善し、社会に適応する力を身につけさせることも必要です。
LDもまた前頭前野の実行機能の機能不全が原因で起きるものです。そのため、定型発達の子どもたちに比べて、ADHDの子どもはLDも併せ持っている確率が高いのです。彼らが特に学校生活などで勉強に集中できないような態度を示すのは、この機能障害の特性が似ているためでもあると言えるでしょう。
しかしながら同時に、ADHDの子どもに集中力の低さや注意散漫や多動が見られるからといって、これだけではLDも持っていることにはなりません。
脳の実行機能が、読み、書き、計算など特定の能力習得においても機能不全を示すとき、それは初めてLDであることになります。やはりLDは、その名の通り「学習」の場面でこそ障がいがはっきりと現れます。伝統的な「学校のお勉強」のスタイルでは、彼らは自分の能力を発揮することができません。読み、書き、話す、聞く、計算、推論のうち特定の能力の習得に著しい困難を抱える子どもは、LDの可能性があります。

ADHDとLDは、どちらも前頭前野の機能不全が原因と言われています。また、特に子どもの内、彼らは「集中力がない」「勉強ができない」「怠けている」と勘違いされがちです。他の友達がすんなり習得している姿を前に、親や先生から叱られてばかりの自分に、彼らは孤立感や劣等感に苛まれることになります。
その上、同じ前頭前夜に問題を抱えているため、ADHDとLDは、はっきりとした識別が困難な場合もあります。ひとことで「ADHD」と言ってもその症状には個人差があるように、LDもまた症状の出方に個人差があります。
肝心なのは、親をはじめとする保護者や教育者が、ADHDやLDについて積極的に知ろうとすることです。風邪のように薬を呑めば症状が消え去るといったものではなく、簡単に完治させるのが難しいのが、これらの障がいの特徴です。ですが、だからといって「どうにもならない」と諦めずに、どんなサポートが可能か対応策を学んで実践していくことで、彼らの症状は改善し、社会で積極的に幸福を掴むことが出来るようになります。
できるだけ、彼らを孤立させないことが肝心です。