私たちの脳は、頑丈な骨に包まれています。これにより、脳は直接損傷を受けることはありません。しかし、強く頭を打つ、転倒して額を打つなどして意識を失った場合、脳に何かしらの損傷を負ってしまう可能性があります。
もしこういったことが起きてしまった場合には以下のことが症状として現れることがあります。
・途端に勉強ができなくなった
・授業に追いつくのが大変になった
・じっとすることができず、落ち着かない
・後先考えずに行動することが増えた
・計画を練って行動をすることができなくなった
・集中力が減った
・怒りっぽくなる
・先生から指名される前に勝手に答えを言う
・すぐケンカをするようになる
・癇癪持ちになった
・こだわり行動が増えた
・共感能力がなくなった
・自殺願望が途端に増えた
・殺人願望が途端に増えた
これらはどれも、発達障害あるいはパーソナリティ障害の人が抱えることのある症状と非常によく似ています。実際これを裏付けるように、左側のこめかみ部分を強く打って、ADHDの症状によく似た状態になったという症例もあります。頭部への損傷により、ADHDに似た症状が出てしまった方は、実際のADHDに対して行われる療育方法が効果的であることが多いです。
この症例に関していえば、左こめかみあたりの脳の部位はワーキングメモリと関連が深いエリアに近く、そこに損傷を負ってしまったがためにADHDのような症状が現れたと考えられます。
ですが、この状態でカウンセラーに連れていっても脳の機能を改善をしてくれないことがほとんどです。良くて「事故のショックで心に傷を負ってしまった」とアドバイスをされるに止まるケースが少なくありません。
小児科医であれば、「しつけがなっていないだけだから、しっかりと問題行動を消去するように」という説教を聞かされて返されてしまうこともあります。
カウンセラーも小児科医も、皆が皆、脳機能障害や改善方法に精通したプロであるという訳ではないので、そうした誤った診断に基づく見当違いな助言が出てくるわけです。
しかし、中には脳機能障害の可能性を見抜いて専門家へと紹介してくれる方もいます。そういった方は今後、時代の急速な変化とともに増えていくだろうと考えられます。
ADHDの脳
ADHDの場合、主に前頭前野が障害されていることが多く、ここをしっかりとトレーニングをすることでポジティブな変化が現れることが期待できます。
基本的には、ワーキングメモリと反応抑制を鍛えるだけでも十分な変化が見込めます。
他には、ドーパミンが不足していると考えられるのでそれを増やすための食事療法やサプリメントを活用することが良いです。ですが、ADHDのタイプによってはドーパミンだけを先に増やしてしまうと症状が悪化することがあります。
医者から処方された薬で症状が悪化した場合
ADHDと診断されて、医者からリタリン、コンサータやストラテラを処方された経験を持つ方も少なくないと思います。しかし、実際に試したら症状が悪化した…なんてことも起こり得るのです。
この場合、他の脳の部位も障害されていた可能性があります。前頭前野以外のエリアにも障害が出ている場合、ドーパミンを増やす薬はむしろ逆効果なことが多いです。
例えば、ADHDは、側頭葉てんかんや双極性障害などとの併存により、ドーパミンを増やすことで余計にイライラしやすくなる、興奮しやすくなることがあるので慎重に判断する必要があります。
こういったケースではセロトニンとGABAをサプリや薬などで増やし、脳全体の安定も同時に行う必要があります。これにより障害されている他の脳部位を安定させ、ようやくドーパミンが狙った方法で効果を表し始めます。
こだわりや過集中が多い自閉傾向タイプ
このタイプでよくあるのが以下のケースです。
・同じことを一日に何度も言う
例)
「漢方薬などなんの役にも立たない!」と一日に5回は言う
「どれもこれも全てあいつのせいだ!」と昔の恨みを何度も繰り返す
「自然治癒が一番だ、薬やトレーニングなんて必要ない」と頑なに拒み続ける
・自分の意見が正しいと思い込んでいて、すぐに相手の意見を否定する
例)
「いや、それは違う。実際はこうだ!」
「俺には腕時計にはこだわりがある。知識と経験はプロ級だから、お前も俺と同じようにしろ!」
「アメリカ人はみんなこうだ!だからダメなんだ!」
「女はみんな頭が悪いんだ!だから男が政権を握るべきなんだ!」
・行動や感情の切り替えが苦手
例)
「この通りのスケジュールじゃなければダメだ!」
「この通りに機械が動いてくれないと困るんだ!」
「何が臨機応変だ、こっちは入念にマニュアルと予定を組んでいるんだぞ!」
「私は10年前の恨みを未だに覚えている、絶対に忘れないぞ!」
「このやろう、めちゃくちゃにしてやる!(延々と殴り続ける;本人の意思でやめられない。いわゆる暴れ出したら止められないタイプの人)」
これは脳の部位で言えば、「帯状回」と呼ばれるエリアの過活動により行動の切り替えや注意の切り替えが難しくなるためと考えられます。
つまり、一見すればただの頑固な人も、実際は脳機能障害である可能性があるということです。
こだわり行動を減らすにはこの「帯状回」の過活動を沈めることが最も有効です。
帯状回の過活動を沈めるのに効果があるのが、セロトニンを増やすことです。セロトニンが増えることでこだわり行動に関係がある脳の部位は過活動は治ります。
セロトニンとは本来、家族とリラックスして過ごしている時や恋人とゆったりとした時間を過ごすといった状況下で分泌されるホルモンです。
つまり、普段から家族や恋人などとのスキンシップなどをしていれば、こだわり行動が表に現れる可能性は低くなると考えられます。逆にスキンシップが慢性的に不足していると、こだわり行動が増えてしまう可能性が高くなります。こうなると大変です。
もともとスキンシップがなく、セロトニン不足からこだわり行動が増える。こだわりの強さからか、異性から避けられてしまい出会いが減る。それによりスキンシップはなおさら無くなる。こだわり思考やこだわり行動は増え、頑固な人へと変化してしまう。こういった負のスパイラルが生まれてしまうわけです。
こうなると、「私の良さを見抜けない女が悪い、気づかない女が悪い!」という思考が強化され、運命的な出会いは絶望的になってしまいます。
この予防のためにも、サプリメントなどを活用してセロトニンを増やし、柔軟性のある頭を取り戻すことが重要となります。
癇癪持ち、モラハラ夫や自殺願望の脳
人格障害(別名パーソナリティ障害)と発達障害の併存タイプのADHDもあります。
そもそもパーソナリティー障害とは何かというと、
・神経質
・内向的
・引っ込み思案
・友好的
・本能的
などの組み合わせの強弱で私たちの性格は作られていますが、パーソナリティー障害の場合この性格の一部が極端に強い、あるいは弱いことで社会での生活に支障が出ている障害のことを言います。
ADHDに限った場合、男性であれば自己愛性パーソナリティ障害とADHDの組み合わせが多く、女性であれば境界性人格障害とADHDの組み合わせが多いです。
中には、ADHDから反社会性パーソナリティ障害へと変化するタイプの方もいます。
どちらも共通して言えるのが、以下の通りです。
・すぐに腹がたつ
・苛立ちが酷くなる時期がある
・普段より物覚えが悪くなる
・物忘れが激しくなることがある
・些細なことでかんしゃくをおこしやすくなる時期がある
・他人から言われたことを悪く受け止めることが多い
・イライラがたまり、感情が爆発したあとは落ち着く
・性的逸脱行為が目立つ(性欲が異常に強い)
・軽度の犯罪行為が目立つ(万引きなど)
・気分の変化が極端(元気で活動的になる、あるいはとても落ち込んで無気力になるなど)
このタイプは双極性障害や前頭側頭型認知症(モラルハラスメント夫に多い脳の機能障害)との関連性も指摘されており、ADHDを基盤とした人格障害か双極性障害である可能性が高いと考えられます。
こういった症状が出ている場合、「側頭葉」と呼ばれる脳の部位が障害されている可能性が高く、心理療法やドーパミンを増やす薬がいまいち効かないか、むしろ悪化させることもあります。
側頭葉の働きを正常化させるには、GABAを増やす、抗てんかん薬などを使って安定化させることが重要となります。うっかりドーパミンを増やす薬を飲もうものなら余計にイライラとして問題行動が増えることがあります。
親が発達障害や人格障害だったら?
もし上記のさまざまな例をみて、「自分も当てはまるかも」「自分の家族にこんな人がいる」と思った方は、お子様にその素因が遺伝している可能性があります。
素因と環境の掛け算で、脳の機能障害が進む可能性は高まることがあります。
将来的なリスクを少しでも減らす、あるいは未然に防ぐためにも適切な介入は必要となるので、もしお悩みであればソウマハウスへの見学を一度検討してみてはいかがでしょうか。