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指を使って数を数えるのはよくないのか?
「娘が大泣きしながら学校から帰って来たので、何事かと聞いてみると、先生から指を使って数えるのはよくないと怒られたと言うことだった」
これに似たような状況になった方はいるのではないでしょうか。
毎日生活の中で必ずと行っていいほど数字を使う場面に出くわします。学校であれば、算数や数学のクラスがあり、日本では古来より「読み書きそろばん」と数の大小に関する重要性を認識していました。
学校でもその重要性は高く、音楽や体育などテーマごとに学ぶ内容を変えるのとは違って算数は必ずと言っていいほど今まで学んだ内容を踏まえて次のステップに進むので、一度でもどこかでつまづいてしまうとその先に進むのが非常に難しくなってしまいます。
そんな中、数の概念への学習が非常に苦手なタイプのお子さんもいます。仮に、点の数を数える課題があったとすれば一般的な子供であれば、2ずつで数えたり、大まかな予想を立てて非常に正確に数字を言い当てることができます。一方で数の概念が苦手な子供というのは、どんなに点の数が少なくとも一個一個ゆっくりと数えないと答えられません。
数の概念が苦手な学習障害のことを「ディスカルキュリア」と言います。
ここでは、数の概念を鍛えるいい方法がないのかについていくつかの論文とともに解説していきます。
数えるときに指を使っていないのに、脳は指を認識している?
2015年の研究ではこんなことがわかっています。
8歳から13歳までの子供達に難しめの引き算の課題をさせたところ、脳の反応を見てみると指と関係の深いエリアが活動していることが分かりました。当然ですが、引き算をさせている間は手を動かしていませんし、直接手を見ていません。引き算の内容が難しければ難しいほど指の脳エリアがより高く活動しました。
また、こちらとこちらの研究でも、自分の指の認識能力が高ければ高いほど数字の認識能力が高いことが分かっています。たとえば、目隠しをした状態で指を触られて、正確に「右の親指!左の中指!左の薬指と人差し指!」などと触れられた指を答えられる人の数学的な能力が指の認識能力の低い人たちよりも数学的なセンスがよかったということです。これは子供だけでなく、大学生を対象とした研究でも同じ結果となっています。
指の認識能力は生まれつきなのか、鍛えられるのか?
ある対照実験(AグループとBグループを比較して追跡調査をすること)や脳画像データから分かっていることは、どうやらその指の認識能力は鍛えられるということです。6歳の子供達に対して指の認識能力を高める訓練をしたところ、指の認識能力が高まっただけでなく数の大小などに関する能力が向上しました。
実際、6歳の時点での指の認識能力を測ることで、算数のテストの成績の良し悪しが予測できることも分かっています。
また、音楽家は数学的なセンスが高い可能性があるとすれば、それは楽器を弾く上で運指をしっかりと認識する必要があるため自然と指の認識能力が高まったことから来ていると考えられます。
どうやって鍛えるの?
今までの実験で分かっていることをまとめると、指それぞれを独立して理解していることがとても重要であるということです。つまり、数を数える時に使うだけでなく、人差し指と中指の違い、中指と薬指の違いをしっかりと認識していることが大切であるということです。
学校では指の区別や指折りをして数えるという授業がない以上、ディスカルキュリアであった場合そのまま育ってしまう可能性があるということが言えます。少しの手間で予防できる将来的な苦労があると考えれば、家庭でもしっかりと指の区別や指折りで数の練習をすることが重要です。
直線を使った訓練法も科学で判明!
他にも、とても興味深い発見がある対照実験で分かっています。それは、直線上に数字を打ったものを使って数字の大小、順番や進み方などを学ぶ方法です。
低所得者層の子供達と中流所得者層の子供達との間にあった数学的なセンスのギャップが、合計60分の直線を使った数字の訓練を通じてその差がなくなったことが分かっています。
一方で、時計のような円を使った数字の訓練を行ったところ、その後に能力に変化がなくギャップが埋まりませんでした。どうやら直線を使った方法でなければ人の脳は数字の認識能力が高まらないようです。その詳しいメカニズムはまだ解明されていませんが、少なくとも時計や分度器を使って数を教えるのではなく、物差しなどを使って教えることの方が良いということですね。
キッズデベロッパーでは、よりクリエイティブで楽しく数字の概念が学べるように考えられた教材を使って数字とワーキングメモリを鍛えているので不安をお持ちの方は是非ともお問い合わせください。