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医療の現場でクレーマーから暴言を吐かれると、医療の質が大きく低下する?

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子供に対する暴言などで将来的に様々なリスクが増すことを以前記事に取り上げました。

→併せて読みたいコラム暴言によって子供は脳機能障害になる?大人は仕事ができなくなる?

では、日頃から命の危険と隣り合わせである医療現場ではどうなのでしょうか?医者となると少々の暴言くらいではパフォーマンスが下がらないだろうと信じたい気持ちもありますが、実際はそうではないことがいくつかの研究で分かっていています。

医療現場での暴言に関する先行研究と共に、新しく分かったことも併せて解説します。

 

先行研究の紹介

数々の企業で上司からのパワハラ、顧客からの乱暴なクレームなどが日々起こっており(1)中には病院や治療室など、とても集中力や高い品質を求められるような現場でも起きていることが観察されています(211)。

真面目に働いている医者、看護師、医療従事者は、上司、同僚、患者やその家族から乱暴な言葉を日頃から浴びせられるという事実は非常に懸念すべきことであり、暴言を吐かれることで言われた側の精神的な健康が害されるだけでなく(12)、実際に仕事のパフォーマンスが低下することを示唆する 研究データが蓄積されています。

つまり、周りが「本人のためを思って、良かれと思ってキツく言った」として、それで落ち込んだりミスが増えるとしたらそれは気のせいや根性が足りないのではなく、実際に科学的にもブラックな環境は健康にも仕事にもよくないということです。

実験では中程度のクレームを言われた人は一時的にIQが下がり、創造力が下がり、柔軟性が下がり、他人に対して親切でいることが難しくグループ内の協調性が下がることが分かっています。これは、直接言われるあるいは目撃しただけかとは無関係で見たり聞いた者全員にマイナスの影響が出ることが分かっています(1315) 。

患者や同僚からの暴言で、診断の正確性、ケアの質が低下(医者の指示のミス、看護師の指示の実行ミスなど)することも分かりました(16)。

さらに、情報の伝達のパフォーマンス低下、周りからの協力を仰ぐなど医療では重要とされる行動も取りにくくなるということも分かりました(16)。

 

詳細な分析の結果、医療者のパフォーマンスの43%は暴言などで説明が付くこと、さらには医原病(薬害、輸血によるウイルス感染、レントゲン線によるダウン症児の出産リスク7倍増加など、医療行為が原因の疾患)のリスクも暴言などで向上することも分かりました(16)。

 

実験方法

暴言などによる医療パフォーマンスの低下を測るために、NICU(新生児集中治療室)でのトレーニングと称して39人の研修医に参加してもらいました。二つのグループに分け、Aグループは普通のトレーニング、Bグループは新生児の親の暴言(チームのパフォーマンスや技術などとは一切無関係な発言)を間接的に聞かされます。

結果

暴言を聞かされたBチームは、自分たちの能力や結果をなじられた訳でも無いにもかかわらず、チームとしての協調性、診断速度や正確性などがAチームと比較して下がっていました。

 

まとめ

・医療従事者から最高の医療を受けたいなら、決して悪態をついたりなじらないこと。

・万が一なじってしまった場合、すぐさま謝ろう。

・暴言は、子供、大人、医療従事者であろうと無関係に悪影響のみ引き起こす

 

参考文献

 

Rudeness and Medical Team Performance
Arieh Riskin, Amir Erez, Trevor A. Foulk, et al.

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