人を独りぼっちに感じさせる方法は色々とあります。その中でも積極的なものと消極的なものとがあります。具体的には、「拒絶、追放」が積極的なタイプで「村八分、無視」などが消極的な方法と分けられます。
こういった経験をした人はどんな反応をするのでしょうか?
今回は、人が疎外感を感じた時に関する研究を紹介します。
疎外感を感じると激しく怒り出す人
追放、無視や村八分などで仲間はずれにされた時に、一定数、激しく怒り出す人がいます。どうやら、自己愛性パーソナリティ障害の方にこの傾向が見られるようです(1)。怒り出す理由として、やはり強い悲しみと怒りによって攻撃的な態度に出るとも考えられます。しかしながら一方で、現状や周囲をコントロールするため、あるいは自分の要求通りにことを進めるために激しく暴れると結論づけているメタ分析もあります(2)。
ここでさらに興味深いことが分かっています。
自己抑制機能が低いと、怒りの感情が高まった時に、弱い者に八つ当たりしやすくなる
疎外感を感じた人の中で、特に自己抑制機能が低い傾向にある方は、自分よりも立場が弱い人に八つ当たりをすることが多いことも実験で分かりました(3)。
一体どのようにしてその傾向を実験で証明したのでしょうか?
これは、2種類の実験を連続して行うことで観察が可能です。
どうやって疎外感を与えるのか?
まずはじめに「Cyberball game (サイバーボールゲーム)(4)」と呼ばれるパソコン上で行われるゲームをします。どういったゲームかというと、参加者の他に見知らぬ二人、つまり合わせて3人がお互いに見えない場所でパソコンを通じてボールをパスするというゲームをします。
ですが実際は、参加者以外の二人は実在せず、AI(人工知能)が人間のふりをしています。参加者は実在する人と遊んでいると思っているので機械であるとは知る由もありません。
しばらくボールのパスを続けて、一定数のラリーをこなします。すると、ある時からAIは参加者を仲間はずれにするかのようにボールを一切パスせず、しばらくAI同士でラリーを続けます。急にパスをもらえなくなった参加者はここで疎外感を感じます。
どうやって攻撃性を測るのか?
参加者に十分に疎外感を感じさせたあと、今度は「hot sauce allocation (激辛ソースの配分)(5)」に参加させます。この実験の目的は、参加者が激辛ソースを見知らぬ人にどれだけ分けるかを見ることです。
参加者にはこのように説明します。
「今からあなたは、見知らぬ他人(先ほどのボールゲームとは無関係の人)にこのソースを分配してください。分配された相手は辛いものは苦手ですが、出された分は全て飲むように指示してあります。では、自由に分配してください。」
この説明をしたあと、気分が落ち着いている人、疎外感を感じている人、楽しい気分の人とで、それぞれどれくらいの量の激辛ソースを分配するのかを調べます。そうすることで、その人の攻撃性を数値化することができます。
疎外感→激辛ソース→結果
事前のテスト(ボールゲーム)で自己抑制機能の値が低かった方たちは、共通して、疎外感を感じていると無関係の人に対して多くの激辛ソースを分配することが分かりました。
つまり、自己抑制機能が低いと、疎外感を感じている状態では無関係の人への八つ当たりをコントロールするのが難しということです。逆に、自己抑制機能が高かった人は疎外感を感じていても、無関係の人に対して八つ当たりをする傾向はほとんどありませんでした。
まとめ
・自己抑制機能が低い人がさみしい思いをしていると乱暴な言動が目立つようになる。
・自己抑制機能が低いと、無関係な人に対して八つ当たりをしやすくなる。
・自己愛性パーソナリティ障害だと八つ当たりをしやすい傾向にある。
・乱暴な言動を通じて、状況をコントロールしようとしている可能性もある。
・自己抑制機能が高いと、八つ当たりはほとんどしない。
参考文献
1 “Isn’t It Fun to Get the Respect That We’re Going to Deserve?” Narcissism, Social Rejection, and Aggression
Jean M. Twenge
2 On Being Rejected: A Meta-Analysis of Experimental Research on Rejection.
Gerber J
3 It is More than Thought that Counts: the Role of Readiness for Aggression in the Relationship Between Ostracism and Displaced Aggression
Joanna Rajchert
4 Cyberball: a program for use in research on interpersonal ostracism and acceptance.
Williams KD
5 A hot new way to measure aggression: Hot sauce allocation
Joel D. Lieberman