子供をしつける時に、人によっては諭すようにいう人も入れば、お尻を叩いて悪いことであると理解してもらう親もいます。
ここで問題となるのが、具体的にどこまでがしつけでどこまでが体罰なのかということです。厳しさに点数をつけるとして、厳しければ厳しいほど点数が高いとしたら点数の高い子供はその後どのような症状が学校で現れるようになるのでしょうか?
実際に細かく厳しさを点数化できる評価表である「Conflict Tactics Scale: Parent-Child」を元に、実際の研究データと合わせて解説します。
目次
Conflict Tactics Scale: Parent-Childとは?
もともとは夫婦仲の良さや悪さを数値化してデータとして集めるために作られた評価表(Conflict Tactics Scale)を元に、親と子の関係も数値化することができるように作られたのがこの評価表です。
どのような質問項目があるかというと、以下のようになります。
non-violent discipline (非暴力的なしつけ) *もっとも望ましいしつけ方法
・何がダメだったかを説明したかどうか。
・タイムアウトに入れた、あるいは部屋に戻したかどうか
・悪いことを続けさせる代わりに別の課題を与えて気を紛らわせたかどうか
・一週間ゲーム禁止、外出禁止など、特権を取り上げたかどうか
psychological aggression (心理的な暴力)
・大声で叱りつけた、叫んだ、怒鳴ったかどうか
・クソガキ、メスブタなどと子供に口汚く罵倒したかどうか
・家から追い出すぞ!などと脅したかどうか
・叩くぞ!と脅したかどうか
・のろま、バカ、グズなどと悪く言ったかどうか
corporal punishment (体罰)
・揺さぶったかどうか
・くし、棒などの硬いものでお尻を叩いたかどうか
・手でお尻を叩いたかどうか
・子供の手足などを直接叩いたかどうか
・つねったかどうか
physical maltreatment (身体的な虐待)
・首を締めたかどうか
・何度も何度も力一杯叩いたかどうか
・火や熱湯などで故意に火傷を負わせたかどうか
・硬いものでお尻以外の体の部位を叩いたかどうか
・刃物や銃で脅したかどうか
・投げたり床に叩きつけたかどうか
・顔、頭や耳を叩いたかどうか
下に行けば行くほど点数は高く、また条件を満たして入ればいるほど点数は高くなります。
この質問項目を使って様々な研究が行われており、実際に点数によっては大まかにその子供が10〜12歳になる頃にはどのような学校生活を送るのかが予測がつけられます。
点数が高いグループと低いグループとで大きく差が出た
これらの質問項目から点数を出し、実際に3年に及ぶ追跡調査をした研究があります。それによると、3年間高い点数を維持し続けたグループの子供たちは3年間点数が低かった子供たちに比べて以下の点で問題を抱えていました。
男子
・抑うつ的な症状
・仲間はずれ、悪い噂を広められるなどのいじめ被害者になりやすい
・素行障害(不良など)
・周りの目を気にせずわがままに行動する
女子
・抑うつ的な症状
・低い自己評価
・仲間はずれ、悪い噂を広められるなどのいじめ被害者になりやすい
・素行障害
・周りから「攻撃的で破壊的な性格」「強引でわがまま」と評価されやすい
男子と女子を比べると、どうやら女子の方が症状はより強く現れる傾向にあることも観察から分かっています。
二つのタイプに分けられる
点数が高かったグループは大まかには「引きこもりタイプ」と「不良タイプ」の二つのパターンに分けられることも分かります。それぞれ、適切な介入がなければのちに様々なリスクを抱えることとなります。
「引きこもりタイプ」の将来的なリスクとしては以下の通りです。
・自己愛性パーソナリティ障害や境界性パーソナリティ障害
・ネット依存症
・携帯依存症
・ゲーム依存症など
「不良タイプ」の将来的なリスクとしては以下の通りです。
・自己愛性パーソナリティ障害、境界性パーソナリティ障害や反社会性パーソナリティ障害
・ネット依存症
・携帯依存症
・ゲーム依存症
・薬物依存症
・アルコール依存症
・ギャンブル依存症
・性依存症など
まとめ
・体罰、虐待によって子供にどんな未来が待ち受けているかを心配しているくらいが予防にもなる。
・タイムアウトは軽度なしつけの範囲内ではあるものの、乱用は厳禁。
参考文献
・Trajectories of maternal verbal aggression across the middle school years: associations with negative view of self and social problems.
Donovan KL