「自己抑制機能を鍛える」と聞くとどんなイメージが湧いてくるでしょうか。
人によっては、落ち着きが取り戻されると考える人もいますし、引っ込み思案になり余計に人見知りやおとなしさが増長されると心配する人もいます。
果たして、「自己抑制機能」の正しいイメージとは一体どんなものなのでしょうか。
自己抑制機能は感情を冷静にコントロールする能力
分かりやすい例として、自己抑制機能が高い人と低い人とを比べてみましょう。
自己抑制機能が低い人の特徴とは
・性欲や食欲など本能的な欲求を抑えることができない
・怒りなどの感情の爆発をコントロールするのが難しい
・他人が困るかどうかは二の次で、自分の思い通りにならないとかんしゃくを起こす
・飲酒、覚せい剤などにハマりやすい
・授業中に許可なく立ち歩くなど、良いか悪いかを判断する前に思ったことをすぐに実行する
・人見知りや不安が強くなかなか安心できない
自己抑制機能が高い人の特長とは
・自分の欲求を理性でコントロールできる
・瞬間的な怒り、爆発的な負の感情がそもそも滅多に湧いてこない
・自分の思い通りにならなかった場面で、不満をしっかり伝えることはあってもかんしゃくを起こすことはない
・飲酒や覚せい剤にハマることがほとんどない
・善悪の判断を十分にしてから自分の思いついた行動をとる
・不安や人見知りがあったとしても、必要以上に長引くことはない
これらの違いからわかる通り、自己抑制機能が高ければ自分自身の衝動をコントロールできるようになるので、自然と良い人間関係を築き、社会の中でうまくやっていける可能性が高くなります。つまり、自己抑制機能が高ければ、それだけ将来性も高く、逆に低いと人間関係のトラブルや犯罪のリスクなどが高まります。自己抑止機能を高めただけで学力まで向上したケースもあります。
引っ込み思案はなぜ起きるのか
子どもが言うことをきかない暴れん坊であるといった悩みを抱える方は少なくありません。しかし一方で、自分の子どもが奥手でなかなか行動しない、引っ込み思案、自信がない、強く主張することがあまりないといったケースで悩んでいる親御さんも悩んでいるかも知れません。
こうした子どもの消極性も、前頭前野の機能を高めることで解消される可能性が高いです。なぜなら、不安を感じやすくて引っ込み思案であったり、主体的に行動ができないのは前頭前野の機能の低下による可能性があるからです。例えば、引きこもりなどの場合、主体的に行動するための脳機能が十分に働いていないために、それが部屋から出られないといった症状となって現れているとも考えられます。
正しい行動をするためには、まず前頭前野を活用して未来記憶を作り、行動の計画してから実行に移す必要があります。ところが、この未来記憶を作る能力が低下していたりすると、なかなか自主的に行動をしようという気にはなれません。
では、どうすれば主体性や自分で考えて行動できるような脳の機能を高められるのでしょうか。
ワーキングメモリとwant to
方法の一つとしておすすめなのがワーキングメモリを鍛えることです。なるべく「n-back」などではなく、数字を使った訓練方法がおすすめです。「n-back」によって鍛えられる能力は「記憶更新」と呼ばれるもので、未来記憶を作るための訓練としては悪くはありませんが、ベストとは言い難いです。
未来記憶などを使って訓練するには、頭の中でいろんな情報やイメージをまとめて、答えを出すような作業が必要です。
もう一つおすすめなのが、好きなことは何かを普段から意識して“want to”を追求することです。海外の並木町を歩きたい、温泉に行きたい、ドラムを習いたい、ジャズダンスを習いたいなど、いつのまにか諦めていた“want to”の夢を追いかけることです。
人間は、好きな目標や夢を追いかけている間は前頭前野が活性化されています。楽しくて時間を忘れるような経験はありませんでしたか?それは前頭前野が活発に働いている時に起きる現象の一つです。好きなことを一生懸命に追求している時は周りから見ても輝いて見えます。生き生きとした状態を作り出すことができれば、脳はポジティブな変化を次々と起こします。
まとめ
・自己抑制機能を鍛えても引っ込み思案が加速することはない
・自己抑制機能を鍛えることで、感情や欲求を理性的にコントロールできるようになる
・前頭前野の機能を幅広く鍛えると、主体的な行動が取れるようになる
・前頭前野の機能が低下していると、不安を感じやすくなったり行動が取れないという症状に悩まされる