日本で行われた興味深い研究があります。親からどういったしつけを受けて育ったかによって、収入にどのような差が現れるかを分析したものです。
結論からいうと、
・ルールをしっかり守る
・嘘はつかない
・他人に親切にする
・勉強する
という四つが将来性の貢献に繋がったということがわかりました。
また、この四つのうち一つでも欠けていると大幅に収入が低下することも分かっています。つまり、「ルールだけは絶対に守らせる」、あるいは「他人に親切な子になってくれたら他はなんでもいい」というのは将来性の貢献から遠ざかるということです。
それでは、それぞれが脳の機能的にどういった能力を高めているのかを見てみましょう。
ルールを守る
これはイメージ通り、自己抑制機能を鍛えていることがわかります。実際、「背筋をまっすぐにして座れ」となんども注意されたグループと、そうでないグループの学力には差が出たことがわかっています。もちろん、背筋をまっすぐに座るようなんども注意されたグループの方が学力が高い訳ですが、これは自己抑制機能を鍛えられたり注意力を鍛えられたことから結果的に学力が向上したものと考えられます。
「ルールを守る」というしつけを受けた子は
・急いでいるときであっても列に割り込んではならない
・飲酒運転は絶対にしてはならない
・政治家が利権や不正な資金を利用するのは良くない
・不正を見つけたら、速やかに通告すべきだ
・脱税行為は許されない
・法令遵守はどんな場合でも最優先されるべき
という価値観をもつ傾向にあります。
嘘はつかない
これは主に自己抑制機能、先を読む能力や予測する能力、他人との協調性などと関係があると考えられます。
そもそも、嘘をつかざるを得ないような状況になってしまうことを避ける必要があるので、日頃から迷惑がかからないように相手のことを考えたり、ある程度は自分の行動を客観視しながら先を読んで行動するようになるのです。
「冷蔵庫にあるお母さんのプリンが食べたい、でも食べたら怒られる。嘘をついてしらばっくれるか?それともここは我慢してあとで許可をもらうか?」
こういった、いわば心の中で天使と悪魔が葛藤しているような場面で、悪魔が勝てば嘘をつき叱られる頻度が上がる訳です。逆に、天使が勝てば、叱られずにすみますし、その分を別のことに時間が使えます。
他には、相手に迷惑を掛けてまで嘘をつくのは良くない、という利他的な面もあるので協調性も育つ傾向にあります。
「嘘をつかない」というしつけを受けた子供は
・年老いた親の面倒は子どもが見るべきである
・政治家が利権や不正な資金を利用するのは良くない
・不正を発見すれば、速やかに通告すべきである
・面倒ごとでもある程度関わっていくべきだ
・ライバルが困っていたら、手を差し伸べた方が良い
・法令順守はどんな場合でも最優先される
という価値観をもつ傾向にあります。
他人に親切にする
これは主に、協調性や他者の立場に立って気持ちを考える能力と考えられます。
困っている人がいたら助ける、悪さをした人にも何か理由があったはずだから話を聞こう、みんなで仲良くゴールを目指そう、成り行きに合わせて自分の考えや行動も切り替えていこう、自分の強いこだわりや価値観を他人に押し付けずに周囲と協力しよう。
こういった環境や状況に臨機応変に対応する能力と関係があると考えられます。そのため、先に紹介した能力の特徴とは矛盾するのですが、「ルールや法律は絶対!」という考えとは正反対の価値観をもつこともあり得ます。
「他人に親切にする」というしつけを受けた子は
・急いでいるなら、行列に割り込むのも仕方がないかもしれない
・酒を飲んだら、絶対に運転してはいけないとも言い切れない
・年老いた親の面倒は子どもが見た方がいいかもしれない
・政治家が利権や不正な資金を入手するのは多少はやむを得ないのかもしれない
・ 不正を発見すれば、通告はした方がいいかもしれないが断定はできない
・面倒ごとでも関わった方がいい
・ライバルが困っていたら、手を差し伸べた方が絶対いい!
・法令順守はどんな場合でも最優先されるべきとは思わない
という価値観をもつ傾向にあります。
先に紹介した「ルールを守る」「嘘はつかない」の場合と異なり、全体的に極論を振りかざすことをしない慎重な行動や考え方が目立ちます。唯一、「ライバルが困っていたら手を差し伸べた方がいい」という考えがどのしつけ方よりも強いことが特長です。ライバルであれ、悪い政治家であれ、ルールを守らない人であれ、何か事情があるに違いない。法律が全てではない、みんなでハッピーになれる方法でゴールを達成しようという価値観が強いようです。
勉強する
学歴と収入の両方を保証したいと考えると、勉強も重要となることは間違いありません。もちろん、ただ知識を詰め込むだけの勉強だけではなく、ワーキングメモリを鍛えるタイプの勉強も重要です。
勉強をするタイプの子は、全体的に自分の周りのことに対して「ルールは絶対!」など何か極論を振りかざすことはそれほどありません。かといって他人に対して親切になることもありません。どうやら、勉強をするというしつけを受けても、その子どもの人格や価値観に大きな影響を与えることはそれほどないようです。
「勉強をする」しつけを受けた子は
・年老いた親の面倒は子どもがわざわざ見なくとも良い
・面倒ごとには関わりたくない
・ライバルが困っていても手を差し伸べようとは思わない
という価値観をもつ傾向にあります。これはおそらく、このしつけに利己的な面が強いためと考えられます。自分のために勉強する、だから自分だけのことを考えていれば良い。年老いた親、ライバルなんかと関わりたくない。そういう考えが強化された結果と考えられます。
まとめ
これら四つを一つ一つを見ていくと、育っていく価値観それぞれが相反する性質を持つこともあり、それぞれに強みと弱みがあります。
もし「ルールは絶対」というしつけのみで育てられたら、他人の不正を一切許さず非常に厳しい考えを持った人に育つ可能性があります。極論を振りかざすことが増え、周りからひんしゅくを買い、人が離れていくことが少なく無いかもしれません。
もし「嘘はついてはいけない」というしつけのみであれば、まだバランスは良いものの少々厳しい人に育つことがあり、また勉強もしてこないとなると収入や学歴が理想とのギャップを生む可能性はあります。
もし「他人には親切に」というしつけのみであれば、親切すぎて悪い人に付け入れられる可能性があります。それなりに「ダメなものはダメ!」と言える人に育てるためにも、ルール遵守という考えとのバランスは必要となります。
もし「勉強をする」というしつけのみであれば、高学歴ニート、仕事ができないエリートという状態になりかねません。協調性や自己抑制機能を十分に育てずに勉強ばかりしていても将来性が十分に高まるとは言えません。
このように、それぞれが補い合うように関わってくるこの四つのしつけは、どれかだけを強化するよりもバランス良く身につけさせることがとても重要なのです。
この四つすべてを意識して子育てしましょう。