みなさんはお子さんに後片付けをさせていますか。おもちゃで遊んだあと、しっかり片付けをする。水で遊んだあと、しっかり床を拭く。布団の上で遊んだあとは、しっかりたたむ。
こういったことをもし躾けないまま子育てをした場合、どのような大人に育つでのしょうか。
Aさんの事例
Aさんは現在高校2年生の男子生徒です。彼は親にこんなことを言いました。
「死にたい・・・」
一体何があったのでしょうか。
聞いてみると、Aさんは クラスで周りから迫害を受けているそうです。周りから色々と心無いことを言われ続け無視もされるようになり、最終的には「しね」と言われるまでになりました。
そればかりか、初めて付き合った大好きな彼女を親友だと思っていたBさんに横取りされてしまいます。親友に裏切られた気持ちでいっぱいで、さらに彼女のことも忘れられずに毎晩苦しい思いをしており、ついには精神障がいを負うことになりました。毎晩、裏切った親友に対して「殺してやりたい」という激しい恨みに気が狂いそうです。
Aさんにはなぜこんな苦難が続くのでしょうか。
どんな話にも裏はある
今度は、クラスメイト側からの視点を通じて同じ話をみてみましょう。
Aさんはとにかく周りからひんしゅくを買っていました。身勝手な主張が多く、その主張が通らないとなるとかんしゃくを起こすことも少なくありませんでした。徐々に孤立していくAさんは周りから次第に相手にされなくなります。周りのクラスメイトは、Aさんと関わるとロクなことがない、と近づくこうとしません。
それでもまだ気が済まない生徒たちも中にはおり、そのグループは次第にAくんに「死ね!」と言うようになりました。
Aさんの彼女もまた同じで、初めは優しかったAくんも次第に身勝手な振る舞いや言動が目立ち始めました。束縛も激しく、亭主関白なところがあったのでBさんに相談に乗ってもらっていました。Bさんに相談するに従って、Bさんが親身に粘り強く時間をかけて相談に乗ってくれるので徐々に気持ちがBさんへと向かって行きました。結果的に、彼女は愛想をつかしてAさんのもとを離れ、Bさんと付き合うことになりました。
親はどのようにして育ててきたのか
Aさんの母、Dさんは我が子に好きなことをさせて育ててきました。
もし息子が台所で遊んでいたら、水が溢れるくらいになるまで遊ばせていました。その後の後片付けは親であるDさんがしていました。他にも、息子がタンスから洋服などを出して飛び跳ねて遊んでいたら、本人が飽きるまで好きに遊ばせていました。後片付けはDさんが全てしていました。
Aさんが自分の思い通りにならないとかんしゃくを起こすようになったのはその頃からでした。Dさんはどうすれば良いか分からず、息子がやりたいように合わせてきました。自分の思い通りにならないとかんしゃくを起こすという癖がついたのもこの頃で、対応に困っていました。
ところが、高校生になったAさんは、不登校になり、精神障がいを負ってしまいました。結局、親であるD
さんは原因がどこにあるのか一切わからないままでした。
Aさんの脳の機能
Aさんの行動から分かることは二つあります。それは以下の通りです。
・自己抑制機能が低い。
・行動や感情の切り替えがうまくいかない。
このタイプの人は、自分の思った通りにことが運ばないとかんしゃくを起こします。自分の欲求を抑制できず、他人に迷惑をかけてしまうのです。
さらには、「彼女を奪った親友」に対する激しい恨みが消えずに残り続けているのも感情の切り替えがうまくいっていないことを表しています。
脳機能が十分に発達しなかった原因として考えられるのが、Aさんが幼少期だった頃の親の対応にあった可能性が高いです。その対応というのが、「子供に後片付けをさせなかった」ことと、「息子の好きなようにさせていた」ことです。
後片付けをしないとなると、責任を持って自分の行動の後始末をしない子に育つ可能性が高まります。もう一つのリスクが、「勿体無い、ものを大切にする」という気持ちも持たないので、それが結果的に物も他人も大切にできないことへと発展しています。
つまり、一言でいうと「しつけ」が適切に行われなかったということです。
「水を出しっぱなしにするのは勿体無い」
「散らかしたままだと親の片付けが大変になる」
「物を大事にしなければいけない」
こういったことはしっかりと条件づけておく必要があります。脳の神経レベルでも、物を大切にすることと人を大切にすることは神経基盤が共通しています。
大きくなってからの改善は大変なので、子供のうちからしっかりと学習させる必要があります。