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子どもとの関係を良好にする「聞き方」の話

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 前回の記事では、子どもが大人の言うことを聞かない時に、やってはいけない12の対応を紹介しました。そして、本来するべき対応として「聞き方」の改善を提案しました。

 今回は、その「聞き方」について、なぜそれが良いしつけに繋がるのかなど、より詳しく説明していきます。

 

 子どもが大人に言われたことをすんなりやらない、いつもは出来ていることを、その日に限ってやってくれない。そんな時、子どもが必要としているのは、大人に叱られることや解決策を出してもらうことではありません。話を聞いてくれて、理解し、味方になってくれる大人なのです。

 

 これは前回の記事にも書きましたが、子どもの話を「聞く」とは、彼らが表現した思考や感情を理解したことを反映した返事をすること、を意味します。

 

 

また、これも前回の記事ですでに説明しましたが、理解者となるための正しい聞き方を実践するには、5つのコツがあります。おさらいのために、もう一度列挙していきましょう。

 

 1.沈黙

  早急に何か返事をしようと焦らないこと。黙っていなければ、子どもの話を聞くことはできません。

 

 2.注意を向けてそばにいる

  子どもに身体を向け、顔を見て話を聞きましょう。家事など他の事をしながらではいけません。遠すぎない距離、子どもと1〜2メートルの近さに身を置いて話を聞きましょう。

 

 3.簡単な認知

  聞く姿勢として沈黙が何よりも大事ではありますが、黙ったままだと相手が不安を感じるかもしれないし、聞いていないように見える可能性もあります。そこで、「へえ」や「うんうん」などといった、簡単な相槌を打つことも大切になります。

 

 4.オープン・エンドの質問をする

  特に相手が子どもの場合は、泣きじゃくったり、激しく怒りすぎて、冷静に自分の気持ちを説明できない場面が多くあります。そこで、大人は相手が喋りやすくなるよう、「どうしたの?」「何か話してみる?」など、相手が言葉を発しやすくなるようの質問をするのが望ましいです。

 

 5.能動的な聞き方をする

  子どもが何か言葉を発したとき、大人にメッセージを伝えてきた時は、たとえそれがネガティブな内容であっても、「ただそう」などと思って対応を急がないことです。子どもが伝えてきた事に対して、私たち大人がまずすべき事は、解決策を編み出す事でも、正しい結論を出す事でもありません。

  まずは、私たちが、相手(子ども)の考えや感情を聞いて理解したということを、推測を使ったメッセージに込めて伝える必要があります。そうすれば、子どもは「この人は話を聞いてくれている」と思って、心を開き、次の言葉を探すようになるからです。

 

 これら5つのコツを上手く掴んで「聞くこと」を実践すれば、子どもは自分でもきちんと掴みきれていなかった気持ちを打ち明けることができるようになります。そのやり取りを通して、彼らは自分の力で悩みや問題解決のために動こうと、自発的に行動するようになるのです。

 

誤った聞き方 

 

 なるほど、大人は「聞き方」を変えれば子どもとよりよく向き合えるようになるのか。そう思ったとしても、実際に行ってみるとなかなかうまくいかないことも少なくはないでしょう。というのも、トラブルを抱えた子どもを前にすると、私たち大人は、どうしても子どもに「変わってほしい」と願いながら対応してしまうからです。

 

 「変わってほしい、もっとちゃんとしてほしい、あれもこれもできるようになってほしい…」こうした大人の願いは、大人自身を焦らせ、結果的に「できない子ども」に対するイラ立ちとなって、態度に現れてしまいます。当然ながら、そうしたイライラは子どもに伝わるので、そんな大人は自分の気持ちを理解してくれる味方になど見えないでしょう。

 さらに、相手に変化を求めるつもりで「聞く」と、どうしても尋問のようになってしまい、聞いているというよりは問い詰めている態度に変わってしまうことにも注意が必要です。他にも、問い詰めるほどではないにしても、誘導したり操作を感じさせる聞き方をするのも、よくありません。

 

 正しい「聞き方」とは、相手に何かを求めるのではなく、相手を受け入れるような心構えを持つことが肝心となります。

 

よくない聞き方の8つの特徴

 

 能動的な聞き方をするには、私たち大人が陥りがちな「よくない聞き方」を避けなければなりません。具体的には、以下の通りです。

 

 1.感情を大げさに表現する

  「辛かった」ではなく「胸が張り裂けそうだった」など

 

 2.感情を抑える

  「嬉しかった」ではなく「まあ、よかった」など

 

 3.相手から受け取ったメッセージに、自分の考えやアドバイスを付け 加えて返事をしてしまう

  「〇〇したらいいんじゃない?」など

 

 4.相手のメッセージを部分的に省略してしまう

  「つまり××ということね」、「要するに〜〜」など簡潔にまとめてしまうなど

 

 5.すでに終わった話を蒸し返して、前のメッセージを伝えてしまう

  子どもの考え(実際は大人もそうですが)は、コロコロと変わっていくものです。話が 飛んだり、直前と矛盾することを言ったりしても「さっきはこう言ってたのに」「〜〜じゃなかったの?」などと一貫性を求めすぎないようにしましょう。

 

 6.話し手がこれから話そうとしていることを先回りして予測してしまう

  当然のことながら、大人は子どもよりも頭の回転が早く経験も豊富なので、子どもが何 か問題を抱えていたら、本人から状況を聞く前にすぐさま事の次第が想像できてしまうも のです。すると「あなたはきっと〇〇で困っているのだろうから、ママ(パパ)が良いアドバイスをしてあげる」と、たちまち結論を急いでしまうのです。これでは、子どもの話を聞いていることにはなりません。

 

 7.話し手のメッセージを全て繰り返してしまう

  4で「相手のメッセージを一部省略してはいけない」と書いたにも関わらず、一見矛盾しているように感じられるかもしれません。しかし、これは「子どものおしゃべりの内容を全て繰り返す必要はない」という意味です。

 

 8.メッセージを解釈したり、分析してしまう

  これは3、4とも似ています。相手から発せられたメッセージを言葉通りに受け取らず、「きっとこういうことなんだろう」と相手の深層心理を先回りして予測しています。

 この予測が当たるのか外れるのかは問題ではありません。気をつけなければならないのは、予測を始めるということは、すでに相手ではなくあなた自身の考え(価値観)を作り始めているという点です。結果、解釈や分析は子どもの本心とは離れてしまいがちになります。

 時折、「あの子のことは、私が一番よく知っている」と自負する親が、いざ子どものトラブルや悩みを目の当たりにした時に「そんなことで悩んでいるなんて知らなかった」と驚くのは、この影響もあるでしょう。

 

 

 いくつも注意点を列挙されると、能動的な聞き方という姿勢が難しく感じられるかもしれません。しかし、細かい注意点はあくまでも良い聞き方を実践するための参考となるポイントです。そればかりを気にする必要はありません。

 大切なのは、子どもの上に立って支配しようとしないことです。アドバイスや解決策を出すこと、分析や要約といった振る舞いは、相手よりも自分が優れていることを見せつける態度でもあるのです。裏を返せばそれは、相手が自分よりも劣って、無力で、頭の悪い存在だと示しているようなものです。

 上からものを言うのではなく、子どもと同じ目線に立っていることを示し、あくまでも子ども自身が自発的に悩みやトラブルと向き合えるよう後押しする、そのためには、「聞き方」は話し方と同等かそれ以上に大切なものなのです。

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