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未就学児の脳を最適化させ、将来性を最大限に高める科学的な方法 【中編】

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 子どもたちが将来的に社会でうまく生き抜いていくためには、(1)自己制御、(2)共感力、(3)言葉によるコミュニケーション能力、これら三つの力を鍛えるべきです。

 前回の記事では、その具体的な方法として「1.子どもに愛情を示し、安心感を与える関係を築くこと」を紹介しました。今回は、それに引き続き、子どもたちの適応力を高めるための方法を解説していきます。

2.大人は、子どもの“感情のコーチ”であること

 「コーチ」とは、良い手本を見せることができ、子どもたちを良い方向へ引っ張る先導者を意味します。大人は、子どもたちに対して、勉強や社会のルールを教えるだけではなく、自分自身の感情との付き合い方についても教える立場で居るべきなのです。

 感情を制御する力とは、未就学児たちにとって社会への適応力(社会でうまく生き抜く力)をあげるための、重要な鍵となります。感情への理解力が高ければ高い子どもほど、仲間たちから好かれるようになるでしょう。逆に言えば、「恥ずかしがり屋」でいると、その子どもは仲間外れにされてしまうリスクが高くなります。とはいえ、たとえ自分が恥ずかしがり屋な性格であっても、感情への理解が深ければ、孤立する危険性はグッと低く抑えられます。

 子ども自身の、感情への理解力を鍛えるためには、会話に参加させるという方法が効果的です。何が私たちを不快にさせるのか、そして、何が心地よくさせるのかについて話し合いましょう。大人は、なぜこのような気持ちになるのか、その原因は何なのかを子どもにも分かるように説明すればいいのです。そして、悲しみや怒りといったマイナスの感情への建設的な対処法を提案することができれば、子どもたちは、そこから自身の感情のコントロールの仕方を学び取ります。

 ある研究によれば、より日常的かつ教養のある言葉遣いで感情について語る両親のもとで育った子どもたちは、怒りや失意といった自分の気持ちのコントロールが上手だったといいます。

 また、別の研究によると、とりわけ「励ますこと」に力を入れた両親のもとで育った子どもたちは、自分の行動を改善する力が高くなるという報告もあります。つまり、適切なサポートがあれば、子どもたちは自分の欲求が満たされない不満を、自力でコントロールできるようになるのです。

3. 子どもが混乱したりイライラしていたら、大人は冷静になり彼らをサポートすること。子どものネガティヴな感情を抑圧しないこと

 これも、子どもに対して“感情のコーチ”であろうと努力するならば、彼らのネガティヴな感情を押さえないほうが、人格を良い方向へと成長させることができるでしょう。

 たとえば、子どもが明らかに道理に合わない無茶な理由で泣き出したら、とにかくその子を静かにさせたいと思うのは当然です。しかし、ただ単に泣くのをやめるよう言い聞かせるだけでは、子どもは学べません。それよりも、まずは大人が子どもの抱く悲しさや怒り、失望を認めてあげて、その原因となっている問題を解決する方法を提案するのが効果的です。そうした対応によって、子どもの社会性はより高まります。

 未就学児の発達を12ヶ月に渡って追った研究によれば、両親が「子どものネガティヴな感情を認めた上で、解決策を提案する」方法で育児をした場合、子どもたちの社交性はより高まったということです。

 また、別の研究によれば、感情へのサポートを受けて育った子どもは、仲間にネガティヴな感情を見せることが少ないとも報告されています。

 このように、未就学児の社会への適応力の高さと、彼らが両親から感情との付き合い方を学んでいるかどうかには関係があります。子どもたちは、さまざまな状況で親がどのような反応をするのか予測しているのです。

 両親が、安心感や心地よさ、励ましをくれると予測できる環境で育った子どもは、仲間に好かれ、共感能力が高く、協力的に育ちます。

 

4. 誘導するしつけ方を実践すること

 どんな社会でも、子どもに社会性を身につけさせるために、親は誘導によるしつけを行なっています。

 「誘導」とは、たとえば何かしら間違った行動を取った子どもに対して、守るべき正しいルールと、そのルールが存在する理由を説明する教育の仕方のことです。

 誘導によるしつけは、親が子どもに対して毅然とした態度で接し、威厳を保つことにもつながります。また、行儀の良い子どもの育て方でもあるでしょう。

 言葉で教え諭すこと、つまり会話による教育は、子どもをより社交的かつ誠実な性格にするためにも有効な方法です

 たとえば、約300人の未就学児を対象に、しつけ方について3年間の追跡調査をした結果、言葉で誘導するしつけを実践していた家庭の子どもは、より社交的だったと報告されています。別の研究でも、やはり誘導でしつけられた子どもは破壊的な行動や反社会的な振る舞いが少ないとの結果が出ています。そして、もちろんそんな性格の子どもには友達も多いのです。

 

5. ポジティヴな言葉で子どもを刺激し、与える喜びを感じる機会を子どもに与えること

 子どもは、褒められることで育ちます。特に、“正しい行いをすれば褒められる”という体験を通して、彼らはより良い人格の持ち主へと成長できます。

 それでは、注意された子どもはどうなるのでしょうか。子どもの間違った行動を見つけ、それを直したいと思ったとします。その時、大人は注意の仕方に気をつけなければなりません。子どもに、あたかも「自分は生まれつき悪い子」であるかのような印象を抱かせてはいけないのです。そうした物の見方は、子どもの“自分の振る舞いを改めよう” とする気力を傷つけることに繋がります。

 つまり、しつけのためといっても、子どもの自発的な意欲を削いでしまうような注意や叱り方は避けるべきなのです。

 多くの子どもたちは、「思いやり」を見せることの心地よさを分かっています。しかしながら同時に、その心地よさは、大人がサポートして積極的に思い出させる必要があります。

というのも、彼らの「他者を思いやる心」は、放っておいても勝手に育つわけではないからです。

 仮に大人が、子どもに対して「与える」機会や「助ける」機会を用意した場合、良い行いをしたことで得られる心地よさに注目するよう誘導しなければなりません。そうすることで、彼らの「与える」「助ける」といった利他的な行いへの興味を刺激してやるのです。

 あるいは、子どもに「親切心」や利他的な行いの正しさを教えるには、シンプルに“お互いに与え合う”遊びをさせることも効果的です。ある実験によれば、キャッチボールのようなシンプルな遊びを通じてでも、友達に対する寛容さは向上するそうです。

 このような、「与える」行動としては些細な遊びでさえ、利他主義を知るきっかけにはなるのです。

 

6. 子どもの社会関係について一緒に話し、他者と仲良くやっていくための現実的で楽しい方法を手ほどきすること

 もしも、あなたのお子さんが友達との人間関係に悩んでいたら、ポジティヴで建設的な意見で彼らを励ましてあげましょう。誰でも、拒絶され、のけ者にされることはあるのだと子どもに教えてあげるのです。ある研究によれば、およそ全ての未就学児たちの内、役半数の子たちが、友達から何らかのかたちで仲間はずれにされた経験があるそうです

 高い社会性を身につけた子どもであれば、“仲間はずれ”にされることも、改善可能なよくあるつまずきなのだと考えることができます。そのためには、大人は子どもたちに“仲間はずれ”は恐ろしいものだと脅かしたりせずに説明し、理解を助けてやる必要があります。たとえば、一緒に遊んでくれなかった友達については、「彼女はきっと恥ずかしがり屋なんだ」とか「たぶん、ひとりで遊びたかったんだろう」といった具合にです。

 さらに、私たちは問題の解決策を思いつけるよう子どもをサポートし、他に良い方法がないか想像力をはたらかせるよう、彼らを助けるようにしましょう。

 子どもが対人関係で悩むような問題を抱えたら、それは“他者が何を感じているか”を彼らにじっくりと考えさせるチャンスであり、どうすれば人間関係をうまくいかせるのか、つまり、社会でうまくやっていくのかを探求する機会にもなるのです。

 

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 まとめ

 未就学児ほどの年齢の子どもにとって“他者”の存在は、まだあやふやなものでしかありません。しかし、だからこそこの時期に、自分以外の人間は自分とは異なる気持ちや考え方を持っており、助け合い協力し合うことがお互いのためにも大切なのだということを学ぶに良い時期でもあるのです。

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