私たちは今でこそ、問題なく数を数えたり、どちらの棒が長いかをパッと見て理解したり、クッキーの量が多いのはどちらの皿かをすぐに把握できます。
そのおかげで、直感的により多い方とより少ない方見分けて状況に応じて選べるわけです。
例えば、8枚のクッキーが乗ったお皿と12枚のクッキーが乗ったお皿とで、どちらが多いかは、わざわざ数えなくても感覚的に判断できます。
しかも、この能力は赤ちゃんですら持っていることが分かっています。
つまり、この判断力は勉強や社会経験を積んで学んだものではなく、生まれつき備わった機能なのです。
生まれつき備わっているということは、逆に言えば、人間を含む動物にとってこの力がとても重要な能力だったということでもあります。
魚や猿、ネズミでも数の大小を理解しています。
では、私たちはなぜ、数の大小を理解する能力を生まれつき持つ必要があったのでしょうか。
数の読み違えは、命の危険に直結した〜その①栄養〜
分かりやすい例を上げるために、ここで二匹のサルに登場してもらいます。
数を理解する猿の「ナンバーくん」と、
数を理解しない猿の「ダムくん」
ナンバー君は、生まれつき数のセンスを持っているので、量の大小などを直感的に理解します。2個のイチゴの入った皿と5個のイチゴの入った皿があれば、5個入りの方がたくさん食べられるので、そちらを選んだ方が良いと考えることができます。
一方で、ダム君は生まれつきセンスを持っていないので、量の大小を理解しません。
1個も10個も、ダム君からすれば価値は同じです。
仮にナンバー君とダム君がお腹を空かしていたとします。
近くには木が二本立っています。近くの木はそれほど果実が実っていません。ですが、少し遠くの木には沢山の果実が実っており、栄養満点です。
ナンバー君は、木を見比べた時に瞬時に果実の多い方を判断して、多少遠くともそちらを目指します。たとえ距離の遠い木であっても、たくさんの果実が実っているおかげで、結果的には少ない労力でより多くの餌にありつけます。そのおかげで、十分な栄養を蓄えてさらに行動範囲を広げることもできます。
一方で、ダム君はどちらの木の果実の量が多いか少ないか判断できないので、とりあえず近くの木に登って一生懸命に果実を探します。木を登って頑張って探している割には、あまり餌にありつけないので体力の消耗は激しいです。仮に見つけたとしても、すぐになくなるので体力の回復が追いつきません。
さて、どちらのサルの方がより多くの栄養を手にしたでしょうか。どちらのサルの方が少ない労力で多くのリターンを得ることができているでしょうか。
答えは、果実が多く実っている木に向かったナンバーくんであるということは納得できるかと思います。
これが一回や二回の出来事であればまだしも、このような状況が毎日続いた場合、生存競争を勝ち残るのはナンバーくんである可能性が高いと言えます。
数の読み違えは、命の危険に直結した〜その②天敵〜
もう一つの例をあげます。
ナンバー君の天敵であるヒョウがやってきました。
ヒョウはサルを食べるので、うっかり見つかると大変です。
よく見ると二匹いたので、ナンバー君は急いで岩の陰に隠れました。
ヒョウが一匹去って行きました。ですがまだ油断は禁物です。
なぜなら、まだもう一匹残っていることをナンバー君は分かっているからです。
ナンバー君は慌てず、もう一匹のヒョウが立ち去るのを待ちました。
結果的に、ナンバー君はヒョウに見つかることなく逃げることに成功しました。
一方の、ダム君。
ダム君のところにも先ほどの二匹のヒョウがやってきました。ダム君は一匹と二匹の違いをうまく理解できないのですが、ヒョウが危険であることは理解しています。
ダム君はとっさに岩陰に隠れました。
しばらく様子を見ていると、ヒョウが一匹去って行きました。
ダム君からすれば、脅威は去ったので安心します。帰ろうと岩陰から出たところ、まだ残っていたもう一匹のヒョウに見つかってしまいました。
命からがら逃げ切ったダム君ですが、同じ幸運が次もあるかどうかは分かりません。
さて、この例ではどちらがより生存競争に勝ち残りやすいでしょうか。
幸運の女神に守られているダム君、と答えたいところですが、確率や統計は残酷です。そのうちダム君は食べられてしまうでしょう。
しかしナンバー君はしっかりと数を認識できるので幸運に頼らなくとも生き延びるでしょう。
数の概念は、生物の進化から見てもとても重要であるということがお分かりいただけたかと思います。
ソウマハウスでは、数の概念を徹底的に鍛えます。発達障害の改善には数の概念は必要不可欠です。生き残るためにも培ったこの数の概念は人間性知性を高める上でも非常に重要となります。
3歳までに、1から5までの数の概念をしっかりと理解していれば発達障害にならない可能性が高いです。仮に障害があったとしても非常に軽度であると言えます。