育児や教育に悩み、いろんな本を読んで勉強をしている方もいらっしゃるかもしれません。教育に関する参考書は、教育現場の第一線で活躍してきた先生の書いた経験談が多いですが、経験談ではなく研究やデータを用いて教育について論じられている本はここ最近になって増えてきました。
データに基づいた教育と、第一線で活躍してきた先生の経験談とでは、どちらの意見を優先して採用した方が安全なのでしょうか。
この話をする前に、まず証拠にはその信頼性のレベルが存在することを説明したいと思います。
証拠の信憑性には8つのレベルが存在する
実は、論文や実験データなどには証拠レベルが存在します。その中でも信憑性のレベル(エビデンスレベル)が最も低いとされるのが、「専門家の意見」です。つまりテレビなどで持論を展開する専門家の意見は、証拠としての信頼性が最低に位置付けられるのです。理由は、その専門家の個人的な立場によって意見が変わってしまうからです。
バラエティ番組などに登場する科学者やコメンテーターも、その発言はエビデンスレベルで言えば最低ランクになります。これと同じで、教育現場で最前線で活躍してきた教育者の体験談をまとめた本などはエビデンスレベルで言えば最低ランクと同等です。
では、エビデンスレベルを高めるにはどのようにすれば良いのでしょうか。
出典の重要性
エビデンスレベルの高い発言や本を出すのにもっとも有効なのが、エビデンスレベルの高い研究やデータをきちんと参照して物事の説明をすることです。
つまり、自分の個人的かつ主観的な意見ではなく、客観的に行われた研究を通して判明した事実を根拠に発言をすれば、それだけ信憑性は高くなるということです。
具体的には、情報のソースや出典先を明記することが、自分の発言の信頼性を高めることにつながります。
教育者の経験談は無価値?
教育者の経験談や、専門家の意見も、それが個人的な見解の域を超えていないのであれば、エビデンスレベルが低いと言わねばなりません。しかし、そういった経験談や意見が全くの無価値というわけでもありません。
しかし、やはり最も安全で確実なのはエビデンスレベルの高い本を読むことなのは確かです。したがって、まずはそういった本から先に読んで十分に理解してから、補完的に教育関係者の経験談などといった本を読むことが望ましいです。
ベテラン教育者も人によっては3000人ほど見てきたという方もいます。ですが、万単位でデータを詳しく扱っている研究や、それを扱った論文には敵いません。
どんな本がいいの?
それでは、「エビデンスレベルの高い本」とは、どのように見つけ出せばよいのでしょうか。具体的な方法としてまず挙げられるのは、あなたが手に取った本にきちんと「参考文献」の出典が明記されているかどうかです。これが、ひとつの目安になります。
一例をあげるとすれば
・「学力」の経済学 中室 牧子
・やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける アンジェラ・ダックワース
・ピアニストの脳を科学する: 超絶技巧のメカニズム 古屋 晋一
などはしっかりと論文などの参考文献を巻末に載せてあります。
このような本から先に読むことで、より最先端でより正確な情報を得られます。これにより、何が常識で何が例外かが分かるようになるので、教育者の経験談をまとめた本などを冷静かつ批判的に読むことができるようになります。