columnコラム

脳震とうでなぜADHDのような症状が見られるのか

脳震とうの症状とADHDの症状には数多くの共通点があります。それを裏付けるように、実際ADHDに効果のある治療薬は脳震とうを起こした患者に対しても効果的であることが分かっています(1)。

他には、ADHDの児童が脳震とうを起こすと定型発達の人より症状が重症になるることも分かっています。(2)。

 

30分の失神を伴う脳震とうで、ADHDのような症状が表れることから「後天的なADHD」を考える専門家もいます(3)。たとえば、バスケットボールの試合中に起こした脳震とうによって、学校の授業で内容が処理できない、平均点が下がるということも長期的に続き、生活にも様々な影響が出るほど深刻な症例もあります(4)。

 

元からADHDであれば、多動性からくる頭のダメージも増え、結果的に脳震とうとADHDの掛け算で症状がより悪化することもあります。

 

脳のどこが障害される?

 

脳震とうを起こした時に、脳のどこが障がいを負うのでしょうか?まずは脳震とうの症状をみていきます。

 

・めまいやふらつき

・ぼんやりする

・反応が遅い

・興奮状態、怒りやすい、神経質、不安になりやすい

・頭痛が何日も続く

・前後の記憶消失

 

症状から察するに、少なくとも前頭前野が障がいされていると考えられます。これは、ADHDの児童が障がいを抱えているのと同じ脳部位です。したがって、コンサータなどのADHDの治療薬が効果的であるのは非常に納得がいきます。

 

ケーススタディ

 

*数々のケーススタディを元に、架空の人を用いてケースを紹介します。

 

Dさんはバスケットボール選手でした。とても激しい試合の中、二人の選手の下敷きになる形で頭を地面に叩きつけられました。強打した瞬間、視界が真っ白になりましたが、Dさんは問題ないと思いそのまま誰にも相談することなく試合を続けました。

 

それから20分ほどは問題なくプレーを続けられました。試合終了後、寮に戻りますがその頃には吐き気、頭痛や気分の悪さに悩まされます。しかしすぐに治ると思い、いつも通り食事をしました。1時間後、体調が急変します。滝のように嘔吐し、開眼はしているものの意識ははっきりとしておらず緊急入院します。

 

翌朝、脳の画像データをみても目立った外傷や出血は見当たりません。三日ほど安静にしてから、再び試合に出ますが頭痛は酷くなり、満足なプレーができませんでした。

通っている大学の成績も目立って悪くなり、集中できない状態が数週間続きました。毎日鈍い頭痛を感じており、イライラもしやすい状態が続きます。感情の波も大きくなり、当時付き合っていた恋人とも良好な関係が続かなくなり別れます。ついには家族や友達からも徐々に離れられてしまいました。

 

かつての友達はこう言います。

 

「Dは人が変わった。常に怒りっぽくて以前のように集中できているように見えない。バスケットのプレーも以前ほどのキレはなく、わがままで人付き合いも以前のようにユーモアを持って接することがなくなっている。まるで別人だ。」

 

そこから縁があって、脳震とうの専門家にみてもらいました。それまでの生活習慣を見直し、とにかく月単位で静養することを命じられます。スポーツ、勉強や読書など、脳に負荷をかける作業は一切禁止されました。

 

徹底して静養しました。すると不思議と頭痛も徐々に治りました。

 

2.5ヶ月ほど完全に静養したあと、頭痛は完全になくなったので散歩程度の軽い有酸素運動の許可がおりました。非常に軽い運動であれば耐えられるほど脳が回復したようです。

それから2週間後には、トレーニングマシーンを使ったハイキングの許可がおりました。

さらにそれから2週間後、軽いダンベルを使った筋力トレーニングの許可がおりました。

この間、頭痛や意識の弱さといった症状はでませんでした。

 

様子をみながらも、徐々にバスケットボールを使った軽い運動を取り入れ、脳震盪を起こしてから7ヶ月後にはようやく本格的にバスケットボールの練習に参加できるようになりました。

 

ところが5ヶ月後、試合中またもや脳震とうを起こしてしまいます。

 

すぐさま脳震とうの専門家にアドバイスをもらい、五日間は練習も授業も完全に休み静養しました。軽い頭痛が1〜2日続きました。ですがその間、一切薬は飲んでいません。脳震とうの場合は頭痛薬なども飲んではいけないと専門医から指示されているためです。

 

五日後、症状は一切なく、専門医からも良いと言われてプレーに復帰しました。

その後、Dさんは問題なく勉強と試合を普段通りに行えるまで回復しました。

 

ケーススタディから何がわかるか

 

日本であれば、脳震とうは大したことがないように思われており、根性や気合いでどうにかなると考える方も少なくありません。しかしそれは大きな間違いで、根性で続けようとすればするほど、ただ無意味に症状が残るか悪化するだけです。最悪の場合、後天的なADHDとして長期的に残ることもありえます。

 

脳震とうは放っておくと、人間関係や学業にまで悪い影響を及ぼすので、まずは専門家にみてもらい静養することが一番であるといえます。

 

参考文献

 

(1)Randomized Placebo-Controlled Trial of Methylphenidate or Galantamine for Persistent Emotional and Cognitive Symptoms Associated with PTSD and/or Traumatic Brain Injury
Thomas W McAllister

 

(2)Attention-deficit/hyperactivity disorder is associated with baseline child sport concussion assessment tool third edition scores in child hockey players.
Collings LJ

 

(3)Pediatric Traumatic Brain Injury and Attention Deficit
Marsh Königs

 

(4)Post-concussive syndrome in a female basketball player: a case study
Sarah L Strand

 

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