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権威主義的(とても厳しい)な子育ては子どもにどんな影響を与えるか(前編)

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 “権威主義的な子育て”と聞いて、皆さんはどのような状態を思い浮かべるでしょうか。

 1960年代に、心理学者のダイアン・バームリンドは、権威主義な子育ての特徴を、次のように定義しています。

 

 ・言葉で励ますことをしない

 ・地位に従順で、立場が上の者から指示をされたら、疑問に思ったりせず従う

 ・愛情を示さず、恥ずかしい思いをさせたり、罰を与えて子どもをコントロールしようとする

 ・ルールについて、その根拠を説明しない

 

 つまり、子どもに有無を言わさず、とにかく親の指示に従わせ、間違いに対しては罰を与えて恐怖や恥で子どもを支配して、望ましい行いをするよう訓練していくことが、「権威主義的な子育て」なのです。これは、軍隊の訓練にも似ています。

 また、このような子育ては、裏を返せば“親らしい思いやり”が少ない状態とも言い換えられます。

 当然の事ながら、親の思い通りに子どもをコントロールし、素直に従わない場合は罰を与えるなどという環境で育てられた子どもが、健全に発達するとは思えません。親の思いやりや愛情は、成長に悪影響を与えるストレスから子どもを守るのです。

 とはいえ、愛情や思いやりだけで子育ては十分なのでしょうか。子どもの社会への適応力や、行動の問題、情緒の発達、学力の向上にも、思いやりで対応しきれるでしょうか。

 あるいは、権威主義的な躾をする親に育てられた子どもたちの中でも、クラスで良い成績を取ったり、良い行いをする場合はないのでしょうか。

 

 こうした疑問に対して、興味深い調査があります。

 

権威主義的な躾と、その他の躾

 

 子どもの育て方(しつけ方)には、先ほど説明した権威主義的な方法以外に、3つの方法があります。

 

 ⒈ 寛容な子育て:情緒面では思いやりがあって愛情深く子どもを育てるが、ルールや規 範的な行動を子どもに強要することには気後れしている。

 2. 放任主義な子育て:寛容な子育てと似ているが、愛情に不足している。

 3. 威厳ある子育て:権威主義の子育てと似ており、子どもに規範的な行動を強要し、自由に制限を設ける。しかし、権威主義と異なって、服従させるのではなくきちんと養育する。

 

 加えて、威厳ある子育てを実践する親は、子どもに積極的に質問するよう促します。また、子どもに何かルールを守らせようとする際には、必ずそのルールがある理由を説明するのです。さらに、彼らは子どもに恥をかかせたり、罪悪感を抱かせたり、示す愛情を減らすことで支配するといったことはしません。

高圧的で冷たい躾け方は、子どもに悪影響を及ぼす

 

 もしも、子どもが何か間違いを起こしたら、あなたはどうするでしょうか。厳しい罰を与えたり、そういった罰への怯えを利用して、良い行いを強要したり、何らかの形で心理的に子どもをコントロールする人も、少なからずいるでしょう。しかしながら、そういった躾の方法は、たとえ一時的には効果を発揮したとしても、長期的には子どもの行動を改善することはできません。むしろ、状況は悪化してしまうのです。

 

 それでは、子どもたちの反抗や、攻撃的な言動、破壊的な行動といった反社会的な行いについて、改めてよく考えてみましょう。仮に、権威主義的な躾がきちんと成立しているならば、子どもたちの問題行動は、年齢が上がると共に減っていくと予測できます。

 ところが、調査研究によれば、現実は異なりました。およそ1400本以上に及ぶ詳細な調査の結果を見ていくと、子どもを心理的に厳しく支配する育児は、後に子どもたちの問題行動を悪化させることが分かったのです。

 権威主義的な躾けを受けて育ってきた子どもたちは、成長するにつれて、より多くの問題行動を引き起こすようになりました。たとえば、アルコールに手を染める未成年者の割合は、権威主義な子育ての環境に置かれていた者の方が多かったのです。

社会的な適応力と問題解決力

 

 権威主義的な家庭で育った子どもは、社会への適応力が低く、問題解決能力に乏しく、いじめに巻き込まれやすい傾向にあります。しかも、この傾向は、国や地域を問わずに共通している特徴なのです。

 彼らは、物事に対して臨機応変に対応することが苦手で、トラブルをかわす力が弱く、友達を作るのもうまくありません。そのため、彼らは被害者としても加害者としても、いじめに巻き込まれるリスクがとても高くなってしまうのです。

 いくつかの国を例に挙げてみましょう。

 

 アメリカ合衆国

 

 アメリカの青少年に対する調査では、権威主義的な躾けを受けて育った子どもたちは、仲間から受け入れられている実感を持てずにいることが分かっています。また、彼らは自立心もとても低いと報告されています。

 さらに、アメリカの大学生を対象に実施された調査では、彼らは他の養育環境で育った者たちよりも、何らかのかたちでいじめに関与している確率が高いことも報告されています。

 

 中国

 

 北京で実施された小学2年生を対象に行われた調査では、権威主義的な家庭で育った子どもは、社会的な能力が低いと教師から評価されていることが分かりました。彼らは他の子どもたちに比べて攻撃的で、仲間からの評価も低いのです。また、別の調査では、権威主義の持っている“罰を与える”体質と、社会的な機能の低さに関連性を見出す報告もあります。

 

 キプロス

 

 調査員が231名の青少年を対象に行った調査では、権威主義的な家庭で育った子どもたちは、被害者としても加害者としても、いじめに関与している確率が高いと報告されています。

 

 トルコ

 

 トルコの高校生を対象にした調査では、威厳のある養育を行う家庭や、寛容な家庭で育った子どもに比べ、権威主義な環境で育った子どもは社会への適応力が低いと報告されています。

 

 南アメリカとスペイン

 

 ラテン文化の研究者によると、権威主義的な躾けは、子どもの社会への適応力を低めると報告されています。また、権威主義といじめの関連性も認めており、特に、親が子どもの間違いに対して“罰”を与える教育をしている場合は、いじめとの関わりがより高まるとしています。

 

 オランダ

 

 権威主義的な躾けのもとで育った子どもは、先生やクラスの仲間たちから敬遠されがちであることが分かっています。また、彼らは道徳的な事柄に対して慎重に考えられない傾向がある、とも報告されています。

 

まとめ

 

 このように、「躾け」といってもその内容は様々であること、そして、その中でも繰り返し表記した「権威主義的な躾け」は、世界のあちこちの国で子どもの発達に悪影響を与えることが判明しています。

 「厳しい」と一言で表現しても、子どもに失敗を許さず罰を与え、恐怖心を利用して行動を管理するのか。それとも、ルールは厳格に定めつつも、恐れずに失敗をするよう励まし、命令に従わせるのではなく思いやりを持って成長を後押しする態度とでは、大きく異なることが分かります。

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