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親の完璧主義なしつけは、子どもにとって有害になる

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 みなさんは、“タイガー・マザー”との異名を持つエイミー・チュアという方を知っていますか?チュア氏は、アメリカに在住する中国人大学教授で、二人の娘にとても厳しい英才教育を施した事で知られています。なぜかというと、彼女の厳しい教育(しつけ)によって、二人の娘たちはハーバード大学やイェール大学に合格し、さらにはピアノやヴァイオリンといった音楽方面でも才能を発揮するようになったからです。

 チュア氏のしつけ方や教育に対する考え方は、2011年に本としてアメリカで出版され、大きな話題となり、ベストセラーになりました。日本でも『タイガー・マザー』(朝日出版社)のタイトルで本が出ています。それによると、チュア氏の子育て法は、子どもたちに遊ぶ日を与えない。テレビは見せない。また、何事においても“ナンバー1”になること、といった、かなり極端なものです。しかしながら、まさにそのしつけによって、娘たちは学校の成績でほぼ全て満点を取り続け、最終的にはハーバード大学など最難関の大学に受かる事ができ他のです。

 チュア氏のしつけ方は、一般的なレベルよりもかなり厳しいため、驚き呆れてしまう人も少なくありません。とはいえ、子を持つ多くの親たちが、少なからず彼女の子育ての成功を“うらやましい”と思うでしょう。

 

 当時、批評家たちはチュア氏の二人の娘は、「精神的な病を患い、友達の居ないロボットのように育つだろう」と予想されていました。ところが、事実はそんな推測とは真逆だったのです。二人の娘、ソフィアとルルは、学業の面で成功しただけでなく、礼儀正しく、慎み深く、思いやりのある人に育ちました。彼女たちは、自らの子供時代を「辛くもあったけれど、幸せだった」と振り返っています。

 

 それでは、果たして「厳しいしつけ」をすれば、子供はみな学業でも人格形成でも良く育つことができるのでしょうか。それとも、ソフィアとルルが特殊な例だったのでしょうか。

 

 この疑問については、非常に厳しい英才教育が全国的に行われていることで有名なシンガポールの研究が参考になります。研究結果は気がかりなもので「厳しいしつけ」がもたらす影響について、痛いところをつく内容となっています。

 その研究は、7歳の小学生236人を対象に、彼らが親からどのようなしつけを受けて育つかを2010年から5年間に渡って観察するという内容でした。

 たとえば彼らは、親の前で子どもにパズルを解かせて、親には「あなたの思うままに、必要を感じたら子どもを助けてください」と指示を出しました。実際には、親が子どもの行動にどれだけ介入するかを数えるという実験なのです。すると、彼らは「親の過干渉」が多く見られることに気づきました。

 研究者たちは、子どもが何かしらの問題を解こうとする際に、「親の過干渉」は“手助け”になるのかどうかを解明しようとしました。

 

 「親の過干渉」は、より極端なものになると、子どもの行動を邪魔する横やりになってしまいます。先ほどの実験で言うならば、子どもが親の思い通りの行動を取るようになるまで、何回でもパズルを繰り返させる父親や母親の態度がそれにあたります。似たような実験は、8、9、11歳を対象にも行われました。

 

 さらに、実験後に研究者たちは、親と子どものそれぞれと対話をすることで、彼らのメンタルがどのような状態になっているかを調べました。

 その結果、親から過干渉を受けて育った子どもたちは、自分自身に対して過度に批判的で自己評価が低いことが分かったのです。その上、時が経つにつれて、その性格はより強まっていくことも分かりました。しかも、このように過剰に自己批判的な性格は、鬱や不安を感じやすい傾向をも強めてしまうのです。

 

 「もしも、子どもの生活に対して親が“過干渉”でいるならば、それは、子どもたちに対して“自分は不完全な存在なのだ”とメッセージを送っていることになる。その結果、子どもは小さなミスをすることさえも恐れるようになり、“完璧”になれない自分を責めるようになる。さらに、このような不適切な完璧主義は、鬱や不安、もっと深刻であれば自殺さえ選ばせかねないリスクを上昇させるため、子どもの健全な発達にとって有害である」と、完璧主義に基づく過干渉を批判する研究者さえいるほどです。

 

 シンガポールの教育面を見るだけでも、その中で生きる人々の多くが、自分自身に対する不適切な評価にとらわれていることが分かる例が多くあります。子どもたちのおよそ60パーセントは自己批判的な傾向に分類されます。また、78パーセントの子どもたちが、「社会的に定められた完璧主義」に捉われています。59パーセントは自己批判的な傾向と完璧主義の双方を持っていると言われています。

 「自己批判的な傾向」は、その人の内面にある失敗や不完全さへの恐れが症状として現れていると考えられます。「社会的に定められた完璧主義」は、子どもたちに非現実的なまでの高い期待を背負うことを強いるのです。

 

 別の研究でも、親の過干渉に対する批判的な報告があります。

 フロリダの国際大学で助教授をしているエリカ・ムッサー氏は、なぜ一部の注意欠陥/多動性障害(ADHD)の子どもたちは、他の同様の子供たちと違って、10代になるると症状が消えていくのかに着目しました。ADHDの症状が成長後も残るかどうかは、彼らが研究者たちとの対話する際に見せる過度に厳しくネガティヴな言動と関連していると考えたのです。しかしながら同時に、この研究は親による子どもへの過干渉が、ADHDの症状の存続に影響するといったような、関連性を示すには至りませんでした。

 

 また、2014年に出版された、教育やしつけに関する論文では、研究者は、親による「適切なしつけ」と「過干渉」は重大な違いがあると強調しています。

 それによれば、「適切なしつけ」は、子どもが本来備えるべき自信をつけさせたり、能力を高めるための意欲を高めるサポートです。一方「過干渉」は、社会的ないしは一般的に考えて、到底ひとりでは達成するのが難しい事をしなければならないかのような価値観を植え付けるので、「適切なしつけ」とは真逆の関係にあるというのです。

 両親によって、そもそも成し遂げるのが難しい目標を達成しなければならないと教え込まれて育った子どもたちは、大学生頃になると、より一層他者に依存的になります。そして、責任感や誠実さといった能力に欠け、計画的に物事をやり遂げていくのが難しく感じるようになってしまうのです。

 

 シンガポール国際大学の助教授であるホン氏は、「親の過干渉」は毎日の生活のいたるところにあるとのべています。それは、親が子どもが学業の分野でどこまで優秀に育つかといった過度な期待を抱くことです。そして、学校の成績に目を光らせて子どもの焦燥感を煽り、子どもが何か間違った事をした時に、感情的に反応することです。

 

 ホン氏は、子どもとの日常的な会話を少し変えるだけで、状況は改善できると説明しています。たとえば、子どもが何かテストを受けたら、100点満点かどうかに注目するのではなく、どうやってテストに取り組んだのかを話すようにするのです。

 満点を取れたかどうかを尋ねてしまうと、子どもに対して完璧さを求めているというメッセージを伝えてしまいます。しかし、テストの取り組み方であれば、完璧を求めていることにはなりません。

 

 もしも、タイガー・マザーのように子どもを優秀に育てたいのであれば、求めるのは完璧でいることではなく、むしろ積極的に間違いをさせることなのではないでしょうか。

 

育てにくさを感じる、周りと比較してて厳しく育てているかもしれないと不安に感じることがあれば相馬ハウスにお気軽にご相談ください。定型発達、発達障害やグレーのお子さんであればお手伝いできることがあるかもしれません。

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