ADHDの子供は、失敗体験を重ねることが多く、周りに追いつけないことからくる劣等感が強くなりがちです。そのため、たとえば思春期や成人期以降など、のちの人格の形成にネガティブな影響を与えることがあります。
どういったネガティブな影響を及ぼすのかと言うと、以下の通りです。
うつ病
双極性障害など
不安神経障害
トラウマ
パニック障害
解離性障害
依存症
アルコール依存
薬物依存
ギャンブル依存
パーソナリティ障害
反社会性パーソナリティ障害
自己愛性パーソナリティ障害
境界性パーソナリティ障害
DV
児童虐待
家族やパートナーへの暴力
これらの症状が二次障害となって、本人の生きづらさに直結します。
なぜこのようなことが起きるのでしょうか。
人格形成に重要な時期はいつ?
ADHDと診断された子供は、“周りの子は当たり前に出来ているのに、自分にはできない”という感覚に打ちひしがれることがあります。
同じ8歳でも、ADHDの子供の場合、脳の発達が十分に進んでいないため、自分をコントロールする能力や学力が5歳児の平均ほどしかありません。
つまり、定型発達の8歳児ができる課題をADHDの8歳児にやらせるということは、定型発達の5歳の子供に8歳児向けの課題をやらせているのと同じくらい強い負荷がかかっているのです。
こちらのグラフをご覧ください。
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Childhood psychiatric disorders as anomalies in neurodevelopmental trajectoriesより(1)
このグラフでは、緑色が定型発達の脳の成長を表しています。
5歳ごろから発達し、9歳すぎには完成しています。
一方、青色の線であるADHDの脳の発達を見てみましょう。
8〜9歳頃から発達し、11〜12歳頃にようやく定型発達の子に追いつきます。
つまり、ADHDの場合、やはり脳の発達はおよそ3年ほど遅れてやってきています。
この三年のギャップによって、当然ながら同い年の子供たちに比べて出来ないことが多く出てきます。そのギャップを抱えた状態でどのような経験をするかが、その後の人格形成に大きく影響を及ぼすわけです。
もしも自分の子供がADHDだと気づかずに、思わず親が
「どうしてこの程度のこともできないの」
「なんでいつも忘れものばかりするの」
「毎回テストが赤点じゃない、どういうこと!」
「なんで落ち着いて勉強できないの」
「どうして自分勝手なの」
と叱ってしまうとします。
これが3年も続くと、どんなに「良い子」であっても人格への悪い影響は後になって現れます。
つまり、この三年で保護者をはじめとする周りの大人たちが適切な対応をしなければ、二次障害の土台が作られてしまうのです。三年かけて作られた土台によっては、後々に鬱やパニック障害といった症状に悩まされるリスクもあります。
親からすれば、育てにくさからくる体罰や虐待、ネグレクトも起こり得ます。そうなってしまうと、将来的に高い確率で反社会的な行動が増える傾向がとても高まります。
どうすれば予防できるのか
二次障害を予防するには、まず先ほどの三年間にいかにして自己評価や自己効能感を育むかが重要となります。
仮に、子供自身が
自分は・・・
・勉強ができないんだ
・集中力がないんだ
・注意散漫なんだ
・ケンカばっかりなんだ
・物覚えが悪いんだ
・忘れ物ばっかりなんだ
といった評価の低いネガティヴなセルフイメージを形成してしまうと、後々の人格形成に悪影響を及ぼしてしまいます。
まとめると、空白の三年の間に
1 失敗体験や叱られ体験が多いと
→二次障害
2 努力を認められる、十分なサポートが得られていると
→将来性の高い子
のどちらを目指して育てるかは、重要なカギとなります。
とてもシンプルに思えますが、これが非常に大きな差を出します。
(1)
Childhood psychiatric disorders as anomalies in neurodevelopmental trajectories (PDF Download Available). Available from: https://www.researchgate.net/publication/44624481_Childhood_psychiatric_disorders_as_anomalies_in_neurodevelopmental_trajectories [accessed Jul 3, 2017]