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腸内環境に善玉菌を増やしただけで発達障害の予防や改善をした研究のまとめ

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近年、腸内環境が脳や健康に及ぼす様々な影響に関する研究が進んでいます。腸と脳の様々な信号のやり取りによって、免疫力、脳の神経の発達、健康状態が大きく影響を受けることが分かってきました。

 また、発達障害と腸内環境に関する研究も少しずつデータが集まってきているので、そこから何か参考にできれば、療育で伸び悩んでいたお子さんの発達の壁を乗り越える可能性が見いだせるかもしれません。

 

内臓と脳はどのようにしてやり取りするか

 

 様々な研究で分かってきているのが、細菌の出す代謝物質(リポ多糖など)が、免疫機能、ホルモン分泌、迷走神経を反応させるということです。これらの反応が、脳へのシグナルとして機能するのではないかと考えられています。

 さらには、脳のバリアである「血液脳関門」が腸内環境次第では弱まることも分かっています。つまり、脳の門番が機能していないので、本来であれば決して通ることのないアレルギー物質などが入り込んでしまい、脳の炎症を引き起こさせる可能性もあります。そうなると、脳の発達も遅れてしまい、発達障がいとして症状が表に現れることも考えられます。

 

 実際、ネズミの実験では腸内環境によっては、BDNF(脳の神経の成長に関わるホルモン)が減少する(1)、GABA受容体の数が減少する(2)、腸と脳のやり取りはどうやら迷走神経を経由していること(3)、血液脳関門のバリアが弱まる(4)などが分かっています。

 

 ヒトもネズミと同様、脳と腸は主に迷走神経によって強固に結ばれており、ストレスを感じるとそれらが胃や腸に信号として伝わります。以下の画像を見ていただければ、脳から伸びる迷走神経がどれだけ内臓を包み込むように巻き付いているかがわかりやすいかと思います。

画像:https://www.organicolivia.com/2016/12/10-ways-to-instantly-stimulate-your-vagus-nerve-and-relieve-inflammation-depression-more/より

 

脳からのストレスで内臓にもストレスが与えられる一方で、内臓からのストレスで脳は一体どんな影響を受けるのでしょうか?また、内臓のストレスを緩和することで脳の発達に良い影響を与えることはできるのでしょうか。

 

発達障がい児と善玉菌に関する研究の数々

 

以下が今までに行われてきた実験の数々です。

 

1.

 腹痛、便秘、下痢に悩む22人の自閉症児(4歳から10歳)に対してラクトバチルス アシドフィルス(乳酸菌の一種)を一日2回飲むのを2ヶ月続けました。結果、腹痛などは改善され、さらには作業に集中する、あるいは指示をしっかり聞いて行動できるなどの認知機能も大きく改善されました。(5)

 

2.

 33人の自閉症スペクトラムと診断された児童に対してDelpro(海外の善玉菌サプリ)を3週間ほど飲ませたところ、88%がATEC(自閉症の度合い評価表)が下がりました。つまり、自閉的な傾向が改善されたということです。それだけでなく、33人全員の『スピーチ/言語能力/コミュニケーション能力、 社交性、 感覚/認識能力、健康面/身体面/ 行動』などが向上したこともわかりました。他には、腹痛なども軽減されました。(6)

 

3.

 10人の自閉症児にChildren Dophilus(海外の善玉菌サプリ)を飲ませました。腸内環境は改善されたものの、自閉症の傾向の改善は特に見られませんでした。(7)

 

4.

 新生児75人のうち、40人にはラクトバチルス・ラムノサス(乳酸かん菌の一種)、残りの35人には効果のない偽物のサプリをそれぞれ6ヶ月間飲ませました。

結果、新生児がそれぞれ13歳になった時点での追跡調査で分かったことが以下の通りです。

 

・偽物のサプリを飲んでいた子供35人のうち6人は発達障がい児だった。

・一方で、乳酸かん菌を飲んでいた40人は発達障がい児が0人だった。

 

つまり、生まれてからたった半年ほどラクトバチルス・ラムノサスを新生児に飲ませただけで、発達障がいを予防できた可能性が高いということです。(8)

 

アトピーやメタボリックシンドロームなど

 

腸内環境によっては以下の症状が現れることが分かっています(9)。

 

脳神経障害

   うつ、不安神経症、自閉症、ADHD

 

自己免疫疾患

   炎症性腸疾患、クローン病、セリアック病、アトピー

 

メタボリックシンドローム

   肥満、2型糖尿病、高コレステロール血症、高血圧症など

 

その他

   非アルコール性脂肪性肝炎 、喘息

 

まとめ

 

・自分に合った菌で腸内環境を整えることで、脳の発達が正常に進む可能性が高まる。

・新生児のうちに腸内環境を意識していれば、発達障害のリスクが大幅に下がる可能性がある。

・腸内環境がよくないと、肥満とADHD、アトピーと自閉症、うつと喘息など様々な合併症に悩まされる可能性が高まる。

 

参考文献

 

(1) Chronic gastrointestinal inflammation induces anxiety-like behavior and alters central nervous system biochemistry in mice.

(2) Ingestion of Lactobacillus strain regulates emotional behavior and central GABA receptor expression in a mouse via the vagus nerve. Bravo JA

(3) The anxiolytic effect of Bifidobacterium longum NCC3001 involves vagal pathways for gut-brain communication. Bercik P

(4) The gut microbiota influences blood-brain barrier permeability in mice. Braniste V

(5) The level of arabinitol in autistic children after probiotic therapy Joanna Kałużna-Czaplińska

(6) Improvements in Gastrointestinal Symptoms among Children with Autism Spectrum Disorder Receiving the Delpro Probiotic and Immunomodulator Formulation Rachel West DO

(7) Gastrointestinal microbiota in children with autism in Slovakia.

(8) A possible link between early probiotic intervention and the risk of neuropsychiatric disorders later in childhood: a randomized trial Anna Pärtty

(9) Probiotic, Prebiotic, and Brain Development

 

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